11月29日(土) 国立能楽堂
独吟『起請文』(観世流 鉄仙会) 観世銕之丞
仕舞『玉ノ段』(観世流 梅若会)
シテ 梅若紀彰
地頭:山崎正道
狂言(和泉流 三宅家)
シテ(太郎冠者)三宅右近 アド(主)三宅近成
(休憩)
能『石橋』・和合連獅子(金剛流)
シテ(木樵 親獅子)金剛永謹 ツレ(子獅子)金剛龍謹
ワキ(寂昭法師)福王茂十郎 アイ(仙人)三宅右矩
笛:左鴻泰弘 小鼓:曽和鼓堂 大鼓:谷口正壽 太鼓:桜井均
地頭:松野恭憲
面:写真撮ったハズなんだけど・・
今年は、どうやら紅葉狩ができそうもなくて、それを楽しみに国立能楽堂へ。
千駄ヶ谷駅前通りの銀杏は、綺麗に紅葉。
中庭の紅葉は、くすんでしまっている。ツワブキが咲くのは季節通り。
今回の公演企画は、◎明治時代と能ー岩倉具視生誕200年、ということ。
明治12年8月18日に、岩倉亭で行われた「天覧能」での番組に合わせて、舞台を勤めた流派や家の流れを汲む役者が勤める。
江戸幕府の式楽だった能が、維新により、存亡の危機になったときに、岩倉が、教養人だったからか、貴族だったからか、能の復興に尽力したらしい。
独吟『起請文』は、天覧能での『正尊』がらみ。
銕之丞先生の謡は素晴らしい。「イロ」という高音に発する音が、銕之丞先生は立派に高いのです。
実のお目当ては紀彰先生の仕舞『玉ノ段』。天覧能では『海人』が舞われた。その流れで、現代では、梅若家からは紀彰師という事です。うれしいですね。
美しい、緑色っぽい色紋付きで登場。
仕舞『玉ノ段」は、仲間がお稽古でもやったモノ。良く出る仕舞。紀彰先生の仕舞は、教わったとおりで、間違いない。
仕舞は「その時人々力を添え」とのシテ謡から始まって、地謡の「あま人は海上に浮かみ出でたり」で終わるはずが、終わらないでシテ謡が続く。
クドキにまで続く。きっと紀彰先生、折角舞台に出るのだから、仕舞部分だけで終わらせるのは勿体ないと、中入まで謡ったんだ。『海人』の謡本は持っていかなかったが、帰って調べたらやはりここまで伸ばしていた。
プログラムには仕舞とだけだったし、掲載された詞章も仕舞部分だけだったけど、申し合わせかなんかで急遽変更したんだろう。紀彰先生らしい。
お陰様で、こちらは大いに満足。
狂言『隠狸』。三宅家は、今日は見違えたな。
刑法学の中で、狸狢論争というのがあって、確か錯誤の話。プログラムの解説では狸は美味しくないから「穴熊」だったのかも知れないと書いてあったが、狢じゃないのかな。
刑法を学ぶ人には常識的な錯誤論。
能『石橋』は、半能を含めて3回目。金剛流は初めて。舞金剛だし、人間国宝だし、ちょこっと期待。
やはり、前場は少々退屈。間狂言やら、ワキ方語りで説明したくなるのもわかる。
中入で、一畳台が3台も登場。Iの字型に並べる。向かって右の一畳台には赤牡丹。向かって左の一畳台には白牡丹が飾られて、中間の一畳台がそれを繋ぐ。
舞台の前方面は華やかな作り物でいっぱい。
まず、白頭の親獅子が登場。白牡丹の台に乗る。しばらくして赤頭の子獅子。赤牡丹の台に。実際の親子だしね。
さすが、舞金剛で、華やかなことこの上もない。子獅子は、谷落としという事なのか、一畳台から落とされて、くるっと前回り回転する形も。
小書き「和合連獅子」ということか。
二頭の獅子が、舞台上と、橋懸かりの奥にいて、それぞれ舞っており、焦点が2極化するのが忙しい。
「獅子とらでんの 舞楽の みぎん」と地謡が迫力を持って謡うのだけど、地頭が、ご高齢過ぎる(1939年うまれ)のが少し悲しい。
前回拝見した『石橋』の半能は、2024年1月で、獅子は梅若景英君のデビューだった。
その時の地頭が紀彰先生で、超迫力の地謡が頭に残っている。その時のブログも読んでください。
笛方の一噌幸弘師が、療養による休演で、左鴻師に交替。
今年は、こういう交替が多い気がする。