11月5日(水) 国立能楽堂

狂言『饅頭』(大蔵流 山本東次郎家)

 シテ(遠国の者)山本則秀 アド(饅頭売り)山本則孝

(休憩)

能『俊寛』(観世流 観世会など)

 シテ(俊寛僧都)観世清和 ツレ(平判官入道康頼)林吉右衛門 ツレ(丹波少将成経)井上裕之真

 ワキ(赦免使)宝生常三 アイ(船頭)山本泰太郎

 笛:一噌隆之 小鼓:大倉源次郎 大鼓:國川純

 地頭:観世喜正

 面:シテ「俊寛」(日氷 作)

 

まだ紅葉してきていないけど、千駄ヶ谷駅前通りの、イチョウ並木、銀杏が落ちてきていて、匂う。秋だな。

 

狂言『饅頭』、初見の狂言でした。

落ちぶれた男が、饅頭を市で商って生活を支えようとする。どうやら1個が十疋、今の値にして1万円から1万5000円という超高価な代物。売れる訳ないのだが、それを理解できないアド。故郷に土産を買おうと市に来たシテ。買っても良いが、アドに試食せよ、値は払うから、と話す。

信じたアド饅頭売りが、自ら食べてみる。その様子を見ているシテ。用意した饅頭を食べ尽くしてしまうと、シテは約束に反して代価を払わない。抗議するアドに対して、太刀を振りかざして威す。屈してしまい、代価を諦めざるを得ないアド。高価なのに。

 

なんとも、後味の悪い狂言。どういう人間性を込めた狂言だろうか。東次郎家が演ずるのだから、何らかの意味があるはずなのに。世間を知らないアド饅頭売りをからかっただけなのだろうか。

誰か、教えて欲しい。

 

能『俊寛』は、6回目。

舞もなしの劇性をおびる能。全曲が素晴らしい謡、とあるけど、そうかな。

でも、シテが観世ご宗家だし、時期宗家も地謡に出ているし、その他の出演者も豪華なので、何か特別なモノがあるのかと思って拝見していたけど、そうでもなかったな。

 

「俊寛」は、歌舞伎の方が良いかも。

あるいは、微妙な感情表現を、ワタクシが受け止められなかっただけなのかな。楽しくなかった。

 

橋懸かりからの登場は、源次郎先生と、泰太郎さんが、相変わらず美しい。これは見とれてしまう。

 

国立能楽堂のピロティは、「南の宝箱」と称して、鹿児島の物産展。あそこのレストランも、鹿児島カレーと鹿児島ラーメンの特別料理を提供。

要するに、『俊寛』上演に合わせた諸企画。俊寛以外の2名に恩赦を与える理由は、清盛の娘で、高倉天皇の妻・平徳子が、後の安徳天皇を出産するのが、11月12日にちなんだか。

だから、この時期に『俊寛』がかかって、観世ご宗家のお出ましまで願って、鬼海が島や鹿児島の特別企画に繋がるのだろうか。

今まで、こういう企画はなかったから、ちょっと不思議。

それでも、観世ご宗家のシテだから、決まり面の「俊寛」も、日氷作という名品をかけたのでしょうか。

 

中庭の木々は、ミヤギノハギが盛りを過ぎた。クヌギなどは、枝を下ろしていて、サッパリ。紅葉はまだ。