10月19日(日) 梅若能楽学院会館

ショートレクチャー 川口晃平

舞囃子『砧』後

 シテ 高橋栄子

 笛:竹市学 小鼓:飯田清一 大鼓:原岡一之 太鼓:桜井均

 地頭:梅若長左衛門

能『小督』・恐之舞

 シテ(源仲国)梅若紀彰 ツレ(小督ノ局)山中迓晶 トモ(侍女)鷲尾雄紀

 ワキ(勅使)福王和幸 アイ(嵯峨野ノ里人)石井惣太

 笛:竹市学 小鼓:飯田清一 大鼓:原岡一之 地頭:角当行雄

(休憩)

仕舞『岩船』 土田英貴

  『遊行柳』クセ 角当直隆

  『橋弁慶』 川口晃平 伊藤東朔

    地頭:角当行雄

狂言『棒縛り』(和泉流 野村万蔵家)

 シテ(太郎冠者)野村万禄 アド(主)野村万蔵 アド(次郎冠者)野村万之丞

(休憩)

能『夕顔』・山端之出・法味之伝

 シテ(都女 夕顔女ノ霊)鈴木矜子 ワキ(旅僧)舘田善博 アイ(都五条辺ノ者)河野佑紀

 笛:槻宅聡 小鼓:田邊恭資 大鼓:大倉慶乃助

 地頭:山崎正道

 

今月の梅若定式能は、割と見所が混む。芸術院賞の紀彰師が出演されるからだろうか。

正面最前列の予約席は、紀彰師のお弟子たちがずらりと。

ワタクシも、何と最前列の真っ正面近くで、チト驚く。紀彩の会の仲間が、並ぶのかと思っていたが。

ショートレクチャーの川口さん、『小督』の紹介の時に、あの紀彰先生が舞われますとし、最前列辺りを見込む。

ふむふむ、そうだろう。そうでなくちゃ。

 

スタートは舞囃子の『砧』後。

『砧』は、能として何回か拝見しているけど、舞囃子は初めてかな。

後シテの初めから。「三瀬川 沈み 果てにし うたかたの」から。だから「後」というのか。「砧ノ段」が有名だけど。いつもはストーリーばかりに感覚が向いていたが、こういう舞囃子も悪くない。謡も能も「奥伝」なのだ。

髙橋栄子さん。しっかりと。

 

引き続いてお待ちかねの『小督』、2回目。紀彰師シテは初めて。

凄く楽しみにしていたのに、体調の関係か、午前中から凄く眠くて、前場は大丈夫だったけど、後場に入って「駒の段」辺りで、意識喪失してしまう。勿体ない。ふと気づくと、もう橋掛かりに出ていて、まもなく舞台に入ってこようという段階。

駒を繰りながら橋掛かりに出てくる場面を見逃した!

 

片折り戸から入ってきて、正中に下に居している紀彰先生。

ピクリとも動かないし、直面だから、目ん玉もじっと動かないのが、正面のワタクシによく見える。目の前なんだもん。

こっちが緊張した。

人間誰でも、目の前を何かが動けば、防御反応として、チラとでも目が動くのが普通ではないか。

何か喋ったり、舞っていれば、そちらに集中して目を固定することもできそうだけど、じっと下に居したままでそんなことできるか。

ワタクシならば、ド近眼なので、何も見えないから却って出来るかも知れないけど、紀彰師はそんなに目が悪くないので、見えてしまうのではないか。それが、どこを見つめているか、焦点を合わさないように、じっと見つめるというか、見ていないというか。目は開けたまま。凄いことだと感心する。

 

シテ語りが始まる直前に、やっと呼吸を整えるように、チラと動く。

そして「男舞」。素晴らしい。あの美しさよ。勇猛さも兼ね備えて。形をキチンとまとめる。

 

橋掛かりを下がっていって、幕の前での動き。

完璧でしょう。

正面最前列にいて、こっちが緊張しすぎて、困った。紀彰先生からも見えただろうな。

駒の段の見落としと2点、残念でした。

 

地謡に梅若景英君が登場。前列奥から2番目。前回ほどではなくて、足の痺れも改善したか。あの身体で、じっと座っているのは大変だと思うけど、頑張って貰わないと。来年1月には『翁』の千歳を務めるんでしょ。

 

トモの鷲尾雄紀君。若手だけど、伸びてきた感じ。謡も、所作も。

ただ、ワキ方みたいに安座している時間が長くて、立ち上がった際に、右足が痺れて躓きそうになった。経験を積みましょう。そもそもシテ方で長時間安座していることはあまりないからね。

 

正面見所2列目にいた仲間が所用で帰ったので、2列目に移動した。

 

仕舞3曲。男性。みんな良かった。

『橋弁慶』の子方牛若丸役は、川口さんの甥子らしい。照れ隠しだろうけど、ニタニタしてしまうのは、なんとも。

 

狂言『棒縛り』。

3人とも名手なので、安心して拝見。万蔵さん、やはり痩せたかな。

 

最後の能は『夕顔』。

シテが女流で、最初に拝見したときに絶句はするは間違えるはで、酷かったシテ方なので、不安ばかりで見始める。

が、今回は、絶句で、後見から付けられる失態はなかった。しっかり覚えてきましたね。

僕より高齢のハズだから、大変でした。

謡がうまく行くと、舞も良くできていた。身体がブレてしまうのは、ご高齢のせいと理解しました。

 

小書きの演出かどうかわからないが、序ノ舞の前、3句ほど飛ばしたかと思った。というか、シテが「優婆塞が」と出るところを飛ばしたので、地謡も飛ばして、そのまま序ノ舞に突入したか。

そうだとするならば、地謡や囃子が上手に対応したという事だけど。

 

キリの舞は、ワタクシも仕舞で舞った箇所。

ワタクシはこの『夕顔』キリは好きなんです。

そもそも、源氏物語の女君の中では、人気の女性だし、舞も美しい。

源氏物語シリーズで、仕舞を続けていた。

能でのこの箇所は、あんなにゆっくりだったんだと。ヨワ吟の大ノリ。

 

地謡、地頭は、『小督』よりずっと良かった。

『小督』の時の地謡は、今ひとつ盛り上がらず、最後は、みんなバラバラに盛り上がるという感じでした。

地謡が良いと、良いよなあ。地頭の力量だな。

もし楼雪先生がお元気でおられて、『小督』の地頭をしていたらと、考えてしまう。もう無理なんだろうけど。

 

梅若会の会は、いつも能2番で、疲れる。

来月11月は、別会で、紀彰師がシテの『三輪』がかかる。

小書き「白式神神楽」がつくとのこと。『三輪』は、能2級なのだけど、この小書きが付くと、超絶に位が上がるのだそう。

重き小書きで、秘伝が多いらしい。

前日から深酒は慎んで、体調を整えて、拝見しましょう。

謡のお稽古も『三輪』にするのだ。