10月11日(土) 国立能楽堂

解説 「松虫の音と酒の友」 高橋悠介(慶応大学斯道文庫教授)

狂言『狐塚』(和泉流 万作の会)

 シテ(太郎冠者)深田博治 アド(主)月崎晴夫 小アド(次郎冠者)高野和憲

(休憩)

能『松虫』(観世流 観世会)

 シテ(男 男ノ霊)杉浦豊彦 ワキ(市人)舘田善博 アイ(所ノ者)野村遼太

 笛:藤田貴寬 小鼓:林吉兵衛 大鼓:柿原:柿原光博 地頭:関根知孝

 面:前シテは直面 後シテ「怪士」

 

10月1日(水)に定例公演があったのだけど、お稽古と重なってしまったので、10月初めての国立能楽堂。

冷たい雨。

 

解説は、題が付いてはいるが、要するに能と狂言の解説であって、特に新しいことはなく、学者の解説は退屈なので眠くなる。

 

狂言『狐塚』。豊かに実る田に、鳥を追っ払うように言われるシテ太郎冠者。そこの名は狐塚で、狐が出て化かすのではないかと怯える。見舞いに訪れる次郎冠者と主。という話で、何度か拝見しているので、取り立てて素敵な役者や動きがないと飽きる。

寝てしまった。

 

能『松虫』。初見なのです。本日の目当て。

仲の良い男二人、野に出でて酒と虫の音を楽しむ。一人が虫の音を引かれて草むらに分け入ったが、帰ってこず、もう一人が探しに行くと、死んでいた。仕方なく、土中に埋めてきた。

アイ語りで明らかになるのは、探しに行ったもう一人は自害したと。死ぬときは一緒と約束していた仲だから。

ワキ市人が回向していると、死んだ二人目の男ノ霊が現れて、回向に感謝し、思い出して舞を舞う。

 

ここで言う松虫は、鈴虫のこと。詞章の中にりんりんと出てくる。

 

シテの杉浦豊彦師。1962年生まれの中堅か。

舞は、しっかり、かっちり、間違いなく、形をきっちり、拍もブレず、安心して拝見できる。取り分け、「黄鐘早舞」は珍しいとのことらしいけど、まったく不安なく、拝見できた。

 

アイ語りの野村遼太君は、野村万作の孫と紹介されていた。万作に師事と。萬斎の子ではない。1991年生まれでまだ34歳。上手く語れていたと思います。万作の会で、野村家で。これから注目。

 

この二人の男の関係は如何か。

国立能楽堂パンフの著者の金子直樹は、男色の関係かもと仄めかす。

謡曲集下巻の解題では、「テーマを同性愛的に捉える見方もあるが首肯しがたい」とある。

後者に賛成。

テーマは、友情と風雅。

確かに、一緒に死ぬ約束とか、性愛的に捕らえることも可能だろうけど、それを越えた、風雅な虫の音を楽しむ心と真の友情と理解する。

男女では性が重要であるけど、男ノ友情はそれを越えるのだ。

単にワタクシがゲイ嫌いだという事もあるのかも知れない。

 

好きな中庭。雨の中庭も悪くない。ミヤギノハギが、濃いピンクの花を咲かす。

秋到来だ。