6月20日(金) 新百合ヶ丘イオンシネマ

 

主演 間宮哲太 寺尾聰

息子の雄太 松坂桃李

妻の律子 松坂慶子

原案:アルツハイマーになったテッド・マクダモンの歌を、息子のサイモンがインターネットに上げて6500万回以上再生されたという、イギリスの実話。

 

この実話を、現代に移して、舞台を横須賀の「どぶ板通り」として、映画化したモノ。

寺尾聰のアルツハイマーの演技だけではなく、その歌声が美しい。

 

寺尾聰は、宇野重吉の息子で、初めから歌手としてデビューしていて、後に役者が主となったが、底辺で歌手活動もしていたらしく、「ルビーの指輪」は懐かしいが、名演の映画も多数ある。

例えば「博士の愛した数式」「雨あがる」「同胞(はらから)」などが、記憶に残る。

だいぶ歳を取った。1947年生まれ、78歳かな。

彼が、アルツハイマー型認知症患者を演ずると、ワタクシとさほど年齢差がないこともあって、身に詰まるもんがある。

 

ちなみに、妻役の松坂慶子は1972年生まれで、72歳と。

要するに、我が同年配らの、アルツハイマー患者本人と。家族の物語。

息子役の松坂桃李は、1985年生まれで、36歳。これも我が子らの年齢に近い。

 

この映画は、寺尾聰の歌声に惚れ込んで観ても良いが、アルツハイマー型認知症の面でも観る価値がある。

劇中で、主役の哲太が、家中の家具などを放り出す場面があるのだけど、ワタクシなどは、ああ、何か捜し物をしているんだな、とすぐに気付くが、映画では、家具を壊される家族はひたすら困惑する。

 

記憶と判断力が、落ちていくと、本人は不安になる。その不安が、イライラを産み、回りに当たり散らすこともある。

良く解る。

一つのことに心が行ってしまうと、他のことを忘れる。映画では、ボヤ騒ぎになるシーン。

これも良く解る。

この映画では、ジャズは間違えずに歌え、楽しそうにする。

2021年のドラマに「俺の家の話」というのがあって、能楽師のシテ方家元が認知症となるも、身体に染みこんだ謡は忘れずに、口から出てくる。

そんなモンだな。

 

この映画を、アルツハイマー型認知症という面で捕らえた上で、本人目線で共感するか、それを支える家族目線で共感するか、これはその人の年齢と家族構成に依るのかも知れない。

ワタクシは、間違いなく前者。既に初期症状もあるような気がしているし。

 

勧められて見た映画で、予定したのではなかったが、観る価値はあったかな。

・歌手寺尾聰の歌を聴きに。

・アルツハイマー型認知症の理解啓発に。

・その上で、本人目線か、家族目線か。