4月12日(土) 国立能楽堂
解説 『八面玲瓏ー鬼神の鏡』 原田香織(東洋大教授)
狂言『重喜』(大蔵流 山本東次郎家)
シテ(住持)山本東次郎 アド(重喜)山本則匡 アド(檀家の者)山本則秀
地謡 山本則重 修三郎 凜太郎
(休憩)
能『野守』(喜多流)
シテ(野守の老人 鬼神)長島茂 ワキ(山伏)原大 アイ(所の者)山本則孝
笛:槻宅聡 小鼓:飯田清一 大鼓:大倉栄太郎 太鼓:上田慎也
地頭:友枝昭世
面:前シテ「三光尉」 後シテ「小べし見」
今週2度目の国立能楽堂。通い。
でも、前回とまったく違って、良かった!
曲目もあるだろうけど、役者じゃないかな。ちっとも眠くならない。
解説。八面玲瓏の鏡とは、鬼神が持ち出す鏡のことで、何か、新しい知識でも貰えるかと思っていたけど、要するに本日の狂言、能の解説にとどまって、つまらん。熟睡しました。
狂言『重喜』。初見です。狂言の初見は珍しい。
重喜とは、新発意の名前。初心者の僧ですね。彼が、師匠住持の頭を剃ろうとする。師の影を踏まずの教えに従って、7尺の棒の先に子刀を取り付ける。長刀のよう。それが失敗してしまうと言う話。
アド重喜は子方が演ずることが多いそうで、今回も則匡(のりまさ)くん。2013年生まれ。11歳か12歳。
確か以前、『靭猿』の子猿役で出演した子。子方の成長に合わせて、猿に始まり、重喜を経て、最後は狐、ということかな。
台詞もしっかり覚えていて、動きもキチンとしていて、可愛いし、上手。よく覚えられました。
則秀師の子。
お爺ちゃんレベルの東次郎先生がシテ住持。まだまだ元気だけど、ちょこっと絶句しかけたのは、孫のお稽古に時間をかけすぎたか。
3世代の狂言で、山本東次郎家は、充実しているし、演じ方も、手抜き無しで、しっかり伝統を守っていて、素晴らしい。
地謡が登場する。その謡い方も迫力満点で、亡くなってしまった則俊さんを思い出す。
絶賛。
能『野守』、5回目で、喜多流は初めて。
実は、一週間後に、大阪の大槻能楽堂で、紀彰先生シテの『野守』があって、チケットも、往復新幹線指定席もゲットしているので、その前ぶりで、どんなんかなあ、と思って拝見。
ストーリーは割愛。解っているし。
シテの長島茂師。後場の舞働きから終わりまでの、迫力ある舞。素晴らしい。足拍もビシビシ決まるし。キビキビした動きもあって。「かっぱと踏み鳴らし」でも、ドスンと地獄に落ちる様。
動きの少ない前場も、しっかりとした声。
1959年生まれでまだ60代。
持つ鏡が、手指で挟むようにして持っている。後ろに持ち手が付いていたような記憶だけど。喜多流だからかな。軽いのかな。それにしても、挟むように持つのは大変だと思う。
この点は、来週の紀彰師の持つ鏡がどんなだか、比べてみましょう。
役者によって、こんなにも良い舞台になるのだと、改めて思う。
ウルウルはしなかったけどね。
ワタクシと14歳しか離れていない叔母さんのお見舞いに、招集がかかって前日出かけた。厳しい面会制限の中で、従姉妹とも会い、思っていた以上にお元気で、終わってから楽しく飲んで、やや二日酔い気味で出かけたのだけど、解説で熟睡出来た後、東次郎家の『重喜』で目を見張り、お目々もぱっちりで、『野守』の迫力にも打たれて来た。
終演後、ちょこっと遠回りして、鰻屋で一杯。
良き一日になりました。