1月17日(金) 国立能楽堂
講演 「災害と霊性論ー生と死の〈はざま〉」 金菱清
(休憩)
舞囃子 『淡路』(観世流 観世会)
シテ(伊弉諾の神)上野雄三
笛:八反田智子 小鼓:鳥山直也 大鼓:原岡一之 太鼓:小寺真佐人
狂言 『舟船』 (大蔵流 善竹家)
シテ(太郎冠者)善竹隆司 アド(主)善竹隆平
(休憩)
能 『芦刈』 (観世流 観世会)
シテ(日下左衛門)上野朝義 ツレ(左衛門の妻)上野朝彦 ワキ(妻の従者)福王知登
アイ(所ノ者)善竹大二郎
笛:松田弘之 小鼓:曽和正博 大鼓:山本直也 地頭:岡久広
面:ツレ「小面」 シテは直面
阪神・淡路大震災から30年いう企画公演。
○○年企画っていうのは、多いよね。ここ数日テレビでもこの話題ばかり。悪くないけど、30年だからどうなのさ、という気もある。
あの日の朝は、起きたらテレビで高速道路が倒れている映像が出てきて、死者1名なぞと言っておった。確認出来た死者が1名ということなんだろうが、とっさに嘘だろ、と思ったことを思い出す。
住宅関連死が7割を超したとかで、耐震基準などの改定が行われた。何年か経って、神戸で住宅関連の全国弁護団会議が開かれて、その同僚たちが、泣きながら報告していたことも思い出す。
講演は、能とは関係無しで、熟睡してしまいました。
意図はわかるけど、ね~。
舞囃子『淡路』は、そういう地理的関係から選ばれた曲。
『淡路』という曲については、何も知らなかった。
能楽協会のYouTubeチャンネルに、「能楽を旅する」というコーナーがあって、淡路島が取り上げられている。
どうやら、淡路島は、神話の世界では「国作り」の地らしい。
一度旅しても良いかも。
シテの上野さん、68歳かな、なかなか迫力ある、力強い舞でした。
狂言『舟船』も、場所が西宮ということで取り上げられた曲。
舟(船)を、フネと読むかフナお読むかの、古歌を題材にしたお話。太郎冠者が勝ってしまって、主は「しさりおろう」で終わり。
能『芦刈』、初見なのです。難波の浦が場面なので、取り上げられたらしい。
この『芦刈』、初見なんですが、馴染みがある。お仕舞いでは、笠ノ段を何度も拝見している。
梅若家とは縁のある曲。
「梅若家ー歴史と歩み」という小冊子があって、引用すると・・
(もともとは梅津という姓であったが、37世の)梅津景久は、文明13年(1481年)正月に宮中で「芦刈」の能を勤め、その妙技に感心した後土御門天皇から「若」の字を賜り、「梅若」と改姓した。景久は当時16歳。以来、梅若家では「芦刈」を大事な曲として特別に扱っている。
とのこと。だから、梅若の能会では仕舞で「芦刈」の笠ノ段が舞われることが多い。
景英君も、最初のデビューは、仕舞「笠ノ段」だったと記憶している。
ストーリーは、零落して妻と別離し、今や芦売りに身をやつす、シテ日下左衛門。一方ツレ妻は、別離後、なんでもどなたかの乳母になって、都でも出世していて、従者が付くほど。
ツレ妻は、従者を伴って、前夫を探しに、日下の里にやってくる。紅の綺麗な装束と、小面の面を掛ける。
探すが見つからないので、所ノ者に何か面白い見世物は無いかと聞き、芦売りを紹介される。
黒笠を被って、上等では無い風の装束で登場する、芦売りのシテ。笠で見えにくいが、直面。
そこで、芸尽くしという風に披露するのが、「笠ノ段」。なかなか面白い。
芦を一本差し上げようと、従者を通さずに苦しくないということで、直接手渡しすると、あらま、妻と夫だった。しおる、ツレ妻。
一場モノで中入はないが、物着して、烏帽子直垂姿のシテ。クセ舞、男舞と続く。ずっと直面で、大変。
シテの上野朝義さん、拝見は初めてかもだけど、1949年生まれで、75歳かな、大汗をかいて、立派に舞い通した。面を掛けていると、面の中での汗は見えないのでしょうね。直面だから、見えてしまって、後見が汗を拭う。
すべての出演者は、関西系だったかな。
仕舞は『野宮』キリが終わるので、次は「笠ノ段」にしていただこうか、なんて不遜なことを考える。梅若では大切な曲なのに、ド素人が舞って良いはずが無かろうも。