1月7日(火) 国立能楽堂
素謡 『翁』(金春流)
翁:金春憲和 千歳:中村昌弘
狂言 『蛭子大黒』(大蔵流 宗家)
シテ(大黒)大藏基誠 アド(蛭子)大藏彌太郎 アド(男)善竹忠重
笛:杉信太朗 小鼓:岡本はる奈 大鼓:柿原弘和 太鼓:林雄一郎
(休憩)
能 『海士』・懐中之舞(観世流 観世会)
シテ(海士 龍女)浅見重好 子方(房前大臣)武田智継
ワキ(房前の従者)殿田謙吉 アイ(浦人)善竹忠亮
地頭:関根知孝
笛:杉信太朗 小鼓:観世新九郎 大鼓:柿原弘和 太鼓:林雄一郎
面:前シテ「深井」 後シテ「泥眼」
2025年(令和7年?)の能初回。
年初の会なので、『翁』から始まるだろう、しかもどうやら金春流で、金春流は13回目にして初めてだなあ、なぞと期待していたが、素謡だった。
ちょっと残念だったけど、翁役の金春憲和さん、良いお声で、低温で響いて、なかなかのモノ。ああいう声で謡いたいもんだ。
ただ、どうしても、最初の「とうどうたらり」が「のうのうたらり」と聞こえてしまって、アレッと思っちゃう。金春流の謡い方なのか、金春憲和さんの謡い方なのか。
狂言『蛭子大黒』。初見の狂言。まだ残っていたんだ。
内容はどうってことなくて、とにかく大黒様と恵比寿様が出てきて、舞働きを舞って、なんでも釣れる棹と、宝の袋、打ち出の小槌を上げる、というともかくもお目出たい曲。
狂言っぽくは無い。
『翁』が素謡で、狂言方の出番がなかったから、「三番叟」の替わりかな。
能『海士』、5回目。観世流以外は『海人』だけど、観世流でも梅若会は『海人』。
わかりやすいストーリーで、馴染みもあるので安心して観ていられる。感動はしない。眠りもしない。
今回解ったこと。
前場で前シテが手に持って海中に潜る「利剣」は、なんとなく小刀のようだと思っていたけど、むしろ鎌であった。そうだよね。海中のみるめ(海藻)を刈るモノなんだから、小刀より鎌。
あれで、乳の下をかっ切るのだ。
房前の大臣という名前。この出来事があった志度寺の辺りを「房前(ふさざき)」というから、その地名から房前の大臣になったんだ。
逆に、房前の大臣の古話から、地名が「房前」と名付けられ、“ふさまえ”などでは無くて、”ふさざき”と読むのだと思っていた。
たしか、海人の謡蹟を去年訪ねたときに、そういう名前の交差点があったので、さすが、と思ったなどとブログに書いたはず。
誤りでした。
詞章に、前場、ワキ(房前の従者)が道行で来るとき、「讃岐の国房前の浦に御着きにて候」とある。
また、後シテが、名乗りのような形で、「この裏の名に寄せて、房前の大臣とは申せ、今は何をか包むべき」とある。
いずれにしても、謡蹟をたどるのは、曲の理解はもとより、楽しいもんだ。
シテ役は、あまり存じ上げなかったが、お上手でした。「早舞」は見事。
能楽資料室の「宝生宗家展」。本日から第2期になって、1期と総入れ替えになったのだけど、あまり代わり映えしていなくて、がっくり。
まあ、そりゃそうだよね。全期比較して観る方なんてそうはいないだろうから。
という訳で、今年の『翁』初めは、1月11日(土)の梅若紀彰先生。もの凄く楽しみ。