12月25日(水) 国立能楽堂

狂言 『川上』(和泉流 万作の会)

 シテ(夫)野村万作 アド(妻)野村萬斎

(休憩)

能 『正尊』・起請文・翔入 (観世流 観世会)

 シテ(土佐坊正尊)観世清和 ツレ(源義経)観世三郎太 

 子方(静御前)林小梅 ツレ(義経方)2名、ツレ(正尊方)1名

 立衆(正尊の郎等)8名

 ワキ(武蔵坊弁慶)福王茂十郎 アイ(婢)野村裕基

 笛:松田弘之 小鼓:飯田清一 大鼓:亀井広忠 太鼓:金春惣右衛門

 地頭:岡久広

 

本年最後の能会。これにて千秋楽。高砂じゃないですよ。

 

狂言『川上』、何度か。和泉流にしか無いらしい。

盲目の夫が川上にある地蔵菩薩にお詣りして、願を掛けて、眼が開くようになる。妻も喜ぶが、実は、地蔵菩薩の宣託は、妻とは悪縁だから離縁しろ、離縁しないとまた盲になる、というもの。夫はそれを一旦受け入れ離縁を告げるが、妻が激怒し、泣くので、離縁を思いとどまると、やはり盲目に戻ってしまうというモノ。

なかなか深い内容と心理描写の名作。

今回は、なんと言っても、万作・萬斎の名コンビによる上演で、素晴らしい舞台。

 

最初に、盲目のシテ夫が橋掛かりを出てくるところ。左手を前に出して先を探るようにし、右手を盲目者の杖に突いて、ゆっくり出てくる。この出が素晴らしい。

後で出てくる、アド妻の萬斎は、さっさと出てくる。その対比。

目開きになった段階で、シテ夫は杖を捨ててしまうが、再び盲目となった後には、妻にひかれて、仲良く退場する。その対比。

 

万作師、ちょっと声は聞こえにくいけど、94歳の名演技。萬斎師もすでにベテランの域に達して、狂言界のリーダーである。

 

能『正尊』、初見。今月2回目の初見能。

平家物語が典拠。義経が腰越で止められて鎌倉入り出来ずに、京に戻っていた時点で、シテ土佐坊正尊が、頼朝の命を受けて義経を討ちに来ているらしい。ワキ弁慶がシテ正尊の館に出向き、強引に連れ出してくる。シテ正尊は熊野参詣の途中だと言い訳して、起請文を書き、読み上げる。

嘘だと見抜く弁慶らだが、義経は、感心して、盃を取らせて、静御前は舞を舞う。

素早く館に戻った正尊ら一行は武装する。それを覗いて知った義経方も武装して、迎え撃つ。

戦いのシーン。最後は、弁慶と正尊の一騎打ち。正尊は捕らえられてしまう。

 

まあ、『安宅』と似た現在能・劇能で、全員直面。

御宗家自ら戦うシーンも。ワキ方福王流宗家の福王茂十郎師と、切り結ぶ。御宗家同士の戦い。う~ん。ワキ方もあそこまで戦うんだ。

戦いでは、「仏倒れ」する役者が2名。上手に腰から落ちて、頭を打たないように。

こういう戦いは、小書き「翔入」だそう。

 

前場での「起請文」の語り。さすが宗家で、迫力ある語り。

子方静御前の舞が上手だった。小梅ちゃん。11歳かな。我が孫と同じ。ワタクシの舞より、確りしていて、良かった。

前場の終わり、正尊が橋掛かりを急ぎ足で下がるときに、一旦立ち止まって、キッと義経らを振り返る。

後場は迫力ある戦いだけど、それだけで、私の好きな余韻たっぷりの能とは違う。

どんなかな。あまり懸からないのは、出演役者が多いからかな。

 

中庭は、完全に冬景色。ツワブキの黄色。松は常緑。後は、枯れ枯れ。これも趣がある。

 

今年は、年間で79番のお能を拝見した。月に6番以上。多すぎるかな。

ちょっと疲れてきた。

来年は、1月に『翁』を2回。