11月17日(日) 梅若能楽学院会館

能 『清経』・恋之音取

 シテ(清経ノ霊)川口晃平 ツレ(清経ノ妻)山中迓晶 ワキ(粟津三郎)殿田謙吉

 笛:竹市学 小鼓:田邊恭資 大鼓:大倉慶乃助

 地頭:梅若紀彰

 面:シテ「中将」(作 友閑)

(休憩20分)

連吟 『西王母』 シテ富田雅子 ほか女流ばかり9名

仕舞 『雨ノ段』 梅若紀彰

   『采女』 梅若長左衛門

   『松虫』 梅若景英

狂言 『寝音曲』 (大藏流 山本東次郎家)

 シテ(太郎冠者)山本泰太郎 アド(主)若松隆

(休憩15分)

能 『当麻』・乏佐之翔

 シテ(老尼 中将妃の霊)角当行雄 ツレ(侍女化身)角当直隆

 ワキ(旅僧)宝生常三 アイ(当麻寺門前ノ者)山本泰太郎

 笛:栗林祐輔 小鼓:曽和正博 大鼓:安福光雄 太鼓:三島元太郎

 地頭:山崎正道

 

梅若会の別会は、午前11時開始なので、朝早い。自宅を8時過ぎに出る。

 

能『清経』。7回目だけど、小書き「恋之音取」は初めてかな。

戦や病ではなくて、入水自殺した平家の武将の部下ワキ粟津三郎が、遺髪を持って都の妻を訪ねる。が、自殺を恨んだツレ妻は、遺髪を拒否する。言い訳(?)に出てきたシテ清経ノ霊は、最後の有様を語り、修羅道の苦しみを謡い、舞って、成仏を願う。

7回目だし、キリは仕舞で仲間が舞ったことがあるし、親近感がある能。

だから大して予習もしないで、参加。

 

でも、この小書きは初めてかも知れないと思ったのは、まさしく、シテの出の箇所。

ワキとツレの遣り取りの後、笛が地謡座の前に躙って移動する。そこで、揚げ幕に向かって笛の独奏が始まって、その音色に引かれるように、揚げ幕からシテが登場する。幕も、半幕になって、閉まって、今度は全幕上げになる。そして、橋掛かりをゆっくりと出てくるシテ。そのシテと、笛の緊張感溢れる遣り取り。掛け合い。笛も鳴らさない時間もあり、シテも動かない時間もある。

壮絶な緊迫感の中で、笛の音に引き寄せられるシテ。

シテがシテ座付近に達し、前を向くまで続く。10分以上あったんじゃなかろうか。

笛方の重い習いだと聞く。そうだろうな。どういうタイミングで吹き、シテも動くんだろう。

掛け合いだろうな。その日の。乱拍子みたいな緊迫感。

 

有名な小書きなので、初めてじゃなかろうと思うが、じゃあ、今まで何を観ていたんだ。

 

修羅道の様などを謡う、クセや、キリ。地謡が大いに盛り上がる。地頭の紀彰先生が素晴らしい迫力。

シテの川口晃平さん。声の迫力があるのだけど、迫力一辺倒では、修羅道の苦しみは現せない。

 

上演時間1時間15分は、短く感じるようなお能でした。

 

連吟『西王母』女流全9名。所作を学びました。所作が美しいと良いね。

 

仕舞3曲中、初っぱなは紀彰先生の『雨ノ段』。いつもお手本を見せて頂いている紀彰先生の仕舞。舞台で拝見するのはまた違った良さがある。いつもご注意頂いている型は、キチンと。お手本以上。今度教えて頂こうかな。

2曲目の『采女』はワタクシも舞った仕舞。紀彰先生の次に舞うのは大変だよね。そこ違うと言いたくなる。

3曲目は、影英君の『松虫』。うん。

梅若を名乗る3人の仕舞でした。並べると実力が解ってしまう。

 

狂言『寝音曲』、このところ多いな。

いつもいつも泰太郎さんの出は美しい。

今回の、逆さになってしまう曲は、「七つの子」だったかしら。

 

能『当麻』、2回目。2022年3月国立能楽堂での観世ご宗家シテ以来。

その時はあまり理解しなかったけど、ホントに難しい曲。

当麻寺に伝わる曼荼羅、それを織った中将妃の伝説、阿弥陀如来のご来迎。

前回は、国立能楽堂の詳細なパンフレットによって理解出来たのかも知れない。

 

今回は、事前に梅若謡本を購入して予習したのだけど、読んでも解らない。

中将妃伝説だけではなくて、仏教、漢文の知識も無いとダメ。

 

詞章が難しいのです。漢文が続くし、意味が取れない。

シテの角当行雄さん、お年なのに、よく覚えられたと思う。

でも、難しすぎて、120分の長丁場だし、何回か絶句。仕方ないのですよ。

一回は、後見も付けようとして失敗。「あれ?違うか・・」なんていう後見。

地謡もよく覚えられたと思う。地謡はグループだからなんとかなったのかしら。地頭の山崎さんがキチンと覚えていたんだろうな。

太鼓が人間国宝三島元太郎先生なので、あまり間違えると悲しいし。

 

アイ語りの山本泰太郎さん、狂言のアドに続いての出演で、大変。汗びっしょり。長い語りも間違えずに。立派。

 

まあ、とにかく難しい120分でした。重い曲。

演じる方も見所も大変。

 

興奮冷めやらず、いつもの回転しない回転寿司で、一人飲み食い。常連なので、気が休まるのです。