10月3日(木) 高松栗林公園 檜御殿跡特設能舞台

(当初予定では・・)

能『羽衣』・和合之舞 観世流 梅若会)

 シテ(天人)伶衣野陽子 ワキ(白龍)福王知登

 笛:杉信太朗 小鼓:大倉源次郎 大鼓:亀井広忠 太鼓:前川光範

 地頭:鷲尾維教

狂言『萩大名』 (大蔵流 茂山千五郎家)

 シテ(大名)茂山七五三 アド(太郎冠者)島田洋海 アド(茂山宗彦)

(休憩)

能『八島』(観世流 梅若会)

 シテ(漁翁(化身) 源義経ノ霊)梅若紀彰 ワキ(旅僧)福王知登

 アイ(八島の海人)茂山逸平

 笛:杉信太朗 小鼓:大倉源次郎 大鼓:亀井広忠

 地頭:柴田稔

 

紀彰先生が、四国高松の栗林公園開園150周年プレイベントとして行われる能の会に『八島』のシテとして出演されるとのことであったので、この際、高松への旅行も含めて、3日ほど遊んでこようと企画した、高松旅行の一日目。

6月末には準備を開始し、9月には、新幹線もビジネスホテルも予約し、2日目、3日目の予定も組んでいって、万全の体制。

伶衣野陽子さんが、高松出身だそうで、高松では、紀彰先生よりも有名人。

それに人間国宝茂山七五三さんや、人間国宝大倉源次郎さんが出演されるので、地元では大いに盛り上がり。

チケットの入手もなかなか難しかった。

 

やっと準備やら整い、10月3日が近づいてくると、雨模様の予想。

野外の特設能舞台は無理だなあという感じ。

 

諸都合によって、新横浜の新幹線は10時半発、岡山からマリンライナーなる電車で、瀬戸内海を渡る。瀬戸内海を堪能しようという魂胆。

が、初日朝から天気予報は雨。完全雨防備の服装。

雨天の場合は近くのレグザムホール小ホールで開催するということだったので、もうその気になっていた。

しかも、紀彩の会の仲間が、まったく偶然に同じ電車となる。

 

当日9時には会場変更が通知されるという連絡だったが、正午決定に変更。

で、その正午決定で、栗林公園特設能舞台で行う、という最終決定。あれまあビックリ。

 

高松着15時頃で、慌てて簡易レインコートを購入したりする。

 

開始前に、栗林公園を、雨の中散策。なかかな素晴らしい公園。2時間ほど歩いて、まだホントにやるんかな、という疑問。

それでも特設能舞台に行くと、素晴らしい設定がなされていた。

鏡板の部分が、吹き抜けになっているんだけど、大型の盆栽のような松8本が、ライトアップされていて、ホンモノの松の鏡。されにその奥に紫雲山が見えて、ムードたっぷり。

 

後の解説で、源次郎先生が「是非ここでやりたい」と強く希望されたらしいとのことで、さもありなん。こんな薪能なんて、出来ることはなかろう。

 

しかし、如何せん舞台は水浸し。幾らモップで拭き取っても無理。装束や面が台無しになってしまう。そこで、変更バージョンの舞台。

 

まず『羽衣』は、舞台上には、地謡も囃子方もワキ方も出ず、「鏡の間」で演奏。

綺麗な白の装束を着たシテ天人の伶衣野陽子さん。キリの部分の、よく仕舞で舞う部分だけの短縮バージョン。

が、思いが詰まった舞なので、ワタクシとしては、感極まる。舞の出来映えと言うよりも、その気持ちが・・

能で泣いてしまったのは、久しぶり。勿論詞章は解るから、口ずさむ感じ。

見所も大いに盛り上がって、普段とは違う箇所で拍手が起こるけど、気にならない。

 

次いで狂言『萩大名』の予定だが、これは長袴は完全に無理。出演者3名が登壇して、トーク。

茂山宗彦さんはトークは上手。

 

休憩後、能『八島』の予定だが、これも全能は無理。

間狂言の部分から。しかも、この状況に合わせて、狂言方茂山逸平が、特別台本を作って、演じた。短時間で作語して、淀みなく語る。

ワキ方の語りは、鏡の間から。囃子方の演奏も同じく。

でもシテ義経の霊の舞は、却って良くなったんじゃないかと思えるほど感動的。

よく知る「今日の敵は誰ぞ」からは、これも口ずさむほどの盛り上がり。

あの状況で、最高とも思える舞。よかった。再び感動の涙。

 

最後に、紋付き袴に着替えて、紀彰先生の仕舞『山姥』。背後に見える紫雲山に居る山姥の如く。観客サービスの特別演舞。

 

ほぼ終演時間予定通りの時間まで、見所を楽しませて頂いた。

 

栗林公園は、文字通り栗の林のハズだったらしいが、現在は松林。しかもその松は大きくそびえ立つ松ではなくて、大きな盆栽のよう。よく手が入れられている、だから、公園全体も暗い感じは無くて、背の高い松は少数だから、空が明るい。山が見える。

その盆栽のような松を使って、ライトアップして、鏡板に用いる。

大倉源次郎先生でなくとも、この景色で演能したいという気持ちは譲れないだ。

 

珍しい能会にはなったが、ちっとも高いチケット料金にも不満はない。それもありだし、こういう状況の中でも、お客様を楽しませる能楽師達のプロ根性は、素晴らしい。

どうやら今回のみの薪能ではなくて、またやるらしい。

時間が取れれば、また伺うこともやぶさかではない。

 

ホテルにとって返して、打ち上げの乾杯。

地元香川テレビでも取り上げられていて、放映されていた。

良かった。