何でこの本を読もうと思ったか解らない。
突然頭の中で『夢十夜』が思い出されて、書棚を覗くと、古い文庫本があった。
新潮文庫の『文鳥・夢十夜』という。奥付を見ると昭和51年発行とある。1976年だから、いつ頃買ったか不明だけど、大学時代のことだろう。
高校時代から夏目漱石はよく読んでいて、『吾輩は猫である』は好かずに読まないけれど、以外は大抵読んでいる。
例えば、『こころ』は昭和43年(1968年)発行、『彼岸過迄』は昭和42年(1967年)発行、『行人』は昭和43年(1968年)発行、『それから』は昭和46年(1971年)発行の文庫で、いずれも高校時代だ。
『虞美人草』は昭和49年(1974年)発行だから大学2年以降になっている。
あれ、『門』が見当たらない。
そのほかは、略。
半世紀前の発行の文庫本だから、陽に焼けている。
上記した本は、いずれも内容は覚えている。
が、『夢十夜』は、まったく覚えていない。書名だけ知っていたのか。確かに読んだ形跡はあるのだけど。
小品集。
不安と不条理。
なんとも苦しい作品だから、若い当時は面白くなかったのだろう。
古稀を過ぎて、心に染みる作品になっている。
作品を書いた当時の漱石と、心理状態が共感できるのだろうか。
謡曲を良く聴き、調べるようになって、親近感が湧いているのか。
年齢を経て、不安に襲われているのか。
漱石にしては異質の作品と思われるが、修善寺事件よりは前に執筆したモノだよなあ。