3月15日(金) 国立能楽堂

狂言 『長刀応答』 (和泉流 万作の会)

 シテ(太郎冠者)深田博治 アド(主)野村萬斎

 小アド(客)高野和憲、月崎晴夫

 立衆(客)野村太一郎 内藤連 中村修一

(休憩)

能 『角田川』 (金春流) 

 シテ(梅若丸の母)本田光洋 子方(梅若丸)中村優人

 ワキ(渡し守)福王茂十郎 ワキヅレ(旅人)喜多雅人

 笛:松田弘之 小鼓:曽和正博 大鼓:安福光雄 地頭:髙橋忍

 面:シテ「曲見」

 

陽差しは暖かいのに、風は冷たい。

 

狂言『長刀応答』、初めて。和泉流だけにある曲らしい。

「応答」と書いて、「あしらい」と読む。

「長刀応答」せよとは、適当に客との距離を保って、あしらえ、ということ。邪険にするのでもなく、十分に接待するのでもなく、適当、適切に客あしらいをせよ、ということ。

その意味が、シテ太郎冠者には解らない。ワタクシ達現代人も解らない。が、太郎冠者は解った振りをして、長刀で客を追い返してしまう。

アド主は、長袴に太刀を帯びており、かなりのモノであることが解る。桜見物に来る客が多い時期だけど、伊勢参りに出かけてしまい、留守中、太郎冠者に「長刀応答せよ」と命ずる。

アド客も、長袴だが、太刀ではなく腰のもの。

2人の花見客を長刀で斬りかかって追い返し、意気揚々としている太郎冠者。客達は、語らって若い衆を呼び集め、皆で太郎冠者を懲らしめてやろうとする。

5人で押さえ込んで、長刀を取り上げてしまって、太郎冠者は、やるまいぞ、やるまいぞ。帰ってきた主に叱られるパターンではない。

万作の会の6人が出演した。出ておかしくない石田淡朗君が見えないのは、やはり、イギリスに行っているからだろうか。

なかなか面白い狂言。

 

能『角田川』、4回目。金春流だけ『角田川』と表記して、”すみだがわ”と読ませる。どうしてかな。

これまでは、金剛流、観世流、喜多流で観てきたので、金春流は初めて。

ストーリーは解っているから、詞章もほぼ解るので、液晶画面で、英語で観ようかと思ったが、やはり日本語で。

お能は、意味だけではなくて、言葉遣いやリズム、節も重要だから。七五調の名文は英訳できない。

 

金春流の節は、今度こそと期待したが、やはりまだ不満足。経験不足なんだろう。観世梅若が身に染みこみすぎているか。

 

シテの本田光洋さん。1942年生まれ、81歳か。下に居に入ったり、立ち上がるときに困難で、後見が出てくる。

ちょっと弱りすぎの梅若丸の母。

でも、船中でワキ語りを聞くシーンや、最後に、塚に向かって南無阿弥陀仏と唱えるシーンは、さすがにジックリ。

子方が、塚の中から南無阿弥陀仏と声を出すと、これは子どものはっきりした声で、シテの声と際だってよろしい。

ワキツレの喜多雅人さん。ワキ方宝生流の若手。ハコビで頭が動かず、声もしっかりしている。

若手の能楽師の方が良かったかな。

 

金春流も、聞き込めば良くなるかも。