写真・文 岩田アキラ
檜書店
2020年5月 第1刷発行
この本は、改訂新版となっている。その元の本は、
「能のふるさと散歩」上 京都・奈良編 写真・文岩田アキラ NHK出版
同じく、下 東北~九州編 写真・文岩田アキラ NHK出版
の、上下2巻セットで、2006年3月と6月に第1冊が発行されている。
この2冊は、絶版になっているらしく、図書館にはある。勿論古本はある。
噂では、この元本の改訂作業中に、著者の岩田アキラさんが逝去され、著作権の問題がどうなったのか不明であるが、改訂版の発行すら危ぶまれたところ、檜書店によって、改訂新版として発行されたらしく、元本の下巻に当たる東北~九州編は、改訂新版の発行の見込みは無いらしい。
岩田アキラさんという方は、よく能の写真などで撮影者になっていた方です。
実に面白い本、というか旅行記というか、能蹟の辞書代わりにも使える本で、全国版にならないのは勿体ない。
まず、その地域の地図が示されて、能跡の場所が大枠で提示されている。
更に、場所によっては、細かな地図まで示される。そこに、能蹟の写真が掲載される。
そこに至る交通もできるだけ示されている。
取り上げる能のあらすじもコンパクトに紹介されていて、それが的確で、良く解る。
関連する事項の記載や写真も的確で、相当の能楽に対する知識と愛がなければ著せない。
元本の上巻は、62曲、下巻には77曲が載っていて、ちょっとした能の解説紹介本にもなっている。
それが、改訂新版では、上巻に対応した京都・奈良編の62曲だけとなってしまった。
取り上げられている曲に変更はない。
図版などが改まっただけ。
流行の漫画や映画の聖地巡礼みたい。深田久弥の100名山にも近い。
今まで、京都奈良などは何回も訪れていたが、そこにある謡蹟までは目が届かなかった。
というか、その当時はそういう興味がなかったから仕方ないのです。
それが今や、この本を片手に、謡蹟巡礼や謡蹟めぐりをして見たいと、ホントに思う。
先日、年末に金澤の白山神社に行ったとき、『歌占』の謡蹟である歌占の滝を訪ねたが、まったくこの本を見たからであって、ひっそりとした謡蹟と、解説板を見て読み、写真に収めて、悦に入るのである。これはブログに書いた。
『歌占』という曲はよく知らなかった。が、よく知る曲だと、きっと口ずさむのではなかろうか。
新しい、旅の楽しみ。目的地。
高等遊民の、新たな楽しみ。
是非、全国版共々、適宜アップデートしていって貰いたい。