12月25日(日) 横浜能楽堂
トーク 「異国へのまなざし」 中村雅之(横浜能楽堂芸術監督)
狂言 『茶子味梅』 (和泉流 野村万蔵家)
シテ(唐人)野村万蔵 アド(妻)野村拳之介 小アド(教え手)石井康太
笛:藤田貴寬 小鼓:観世新九郎 大鼓:柿原光博 太鼓:小寺真佐人
(休憩)
能 『楊貴妃』・玉鬘 (喜多流)
シテ(楊貴妃)佐々木多門 ワキ(方士)福王和幸 アイ(常世の者)野村万之丞
笛:藤田貴寬 小鼓:観世新九郎 大鼓:柿原光博
面:シテ「小面」(岩崎久人 作)
今回は「眠くならずに楽しめる能の名曲」というシリーズ。年に一度。
まず中村さんのトークが眠くなる。
大体、このシリーズで、なんで『楊貴妃』を選択するか。眠くなる能の代表格ではないのか。
狂言『茶子味梅』初めて。ちゃさんばい、と読む。読めるわけがない。当て字だから。しかも、好い加減な、狂言特有の”唐音”というめちゃくちゃコトバの当て字だから、わかるはずがない。
“唐音”と言えば、『唐相撲』という面白い狂言がある。そこで使われる“唐音”とはまた違う。
ストーリーは、日本人として生活して日本人妻もいるシテ唐人が、唐音で、故郷の妻が恋しい、茶を飲みたい、酒を飲みたいなどと良い、通訳のような、アド教え手に教えてもらって意味を知ったアド妻が、立腹するが、酒を飲ませて機嫌を取り、応じてシテ唐人が、謡を謡い、「楽」を舞うというモノ。
『唐相撲』と比べて、あまり面白くない。
野村拳之介、萬の孫で、万蔵の次男。長男は万之丞。まだ23歳で、狂言コトバの発声がうまく行かず、ムムム。
この野村萬家は、萬、万蔵、万之丞で3代だからな。
能『楊貴妃』、2度目。2週間前に、川崎能楽堂で、梅若会で見たばかり。
前回と今回のシテの年齢が、30歳も離れているので、そこに注目していた。
でも、4年以上に渡る能鑑賞歴の中で、つい最近2回観たという、「遠い」曲。
でも、ストーリーは、あの白居易の「長恨歌」の比翼連理を基にしているから、高校時代に漢文をお勉強した人は、馴染みがあるかな。
そうでないと、前半も居語りばかり、後半もゆっくりした舞ばかりで、眠くなるのは必定の能ではないのかな。
シテの佐々木多門は、50歳だけあって、ゆったりした舞の中でも、ブレずに、しっかりとしていて、さすがでした。
喜多流の舞は、まあ、わかるのです。
今回、喜多流の「真ノ本ユリ」が、梅若会とは違うということに気付いてしまって、違うんだよね~などと、生意気なことを感じる。大体喜多流が「真ノ本ユリ」という単語を使うかわからないが。
「玉鬘」という小書きは、作り物の蓬莱宮・太真殿から、隙間なく、鬘帯が吊されているモノ。そこから登場するシテは、まず、幕が下ろされた段階では顔は見えない。立ち上がって、外に出るとき、その鬘帯をかき分けて、まるで御簾を別けるような登場の仕方になって、それはなかなかに面白い。
最後、ワキ方士が帰っていき、シテ楊貴妃は再び蓬莱宮・太真殿の中に入るのだが、その時の寂しさが、あまり感じられなかった。まだ若いシテ方だからかな。別れと悲しみ、という境地に達するのは、老齢に達してからか。
楊貴妃自身は高齢者ではないから、若いシテ方でもよろしいのだけど、ご高齢のシテ方も、絶句やら後見に支えられたりはあったが、良かったんじゃないかな。
これで、今年の能楽鑑賞はお終い。ホントの能楽最終は、12月27日(火)の、お稽古ミニ発表会。連吟『菊慈童』と仕舞は『杜若』キリ。