12月10日(土) 川崎能楽堂
狂言 『入間川』 (和泉流 三宅家)
シテ(大名)三宅右近 アド(太郎冠者)三宅近成 アド(入間の何某)三宅右矩
(休憩)
能 『楠露』 (観世流 梅若会)
シテ(楠木正成)梅若紀彰 ツレ(恩地満一)角当直隆
トモ(正成の従者)坂口貴信 子方(楠木正行)角当美織
笛:八反田智子 小鼓:観世新九郎 大鼓:安福光雄 地頭:鈴木敬吾
川崎能楽堂では、定期的に、観世流梅若会の能が上演される。前回も観たし、今回も。
この能楽堂は、柱が半分以下しかなく、見所の数も少なく、舞台とも近いので、親近感があるが、見所の前との座席の間隔が狭いので、今回は、最前列を選択した。
すると、前が広くて座りやすいのは良いのだけど、役者と近くて、顔が目の前にある感じで、何だか恥ずかしい。
最初に来たときは、なかなか席を確保するのが難しい位だったが、コロナの影響か、正面席以外はガラガラと言って良い。何だか、こちらが演者に申し訳ないような気がしてきて、変。
狂言『入間川』は何度も。
結局、入間様という逆さ言葉の言葉遊びの狂言曲だなあ、と思うが、川向こうの人、実はこの辺りの実力者アド入間の何某に声をかけるときに、ぞんざいなかけ方をして、ぞんざいに返されて、シテ大名は成敗致すと申すのを、アド太郎冠者が止めて、丁寧にモノを問うように言い直させる。これで両者打ち解ける。
これが前段にあるので、入間様の言葉遊びも、結局は、言葉遣いということなのでは無いだろうか。
教育的狂言曲か。
能『楠露』。初めて。
当初発表は、チラシでも、シテが梅若楼雪先生だったが、直前にウェブ上でもシテは紀彰師に交替との情報が流れていて、当日配布の番組表では、すでに、シテが紀彰師と記載されていたから、かなり前から交替は確定していたんでしょう。入口にも掲げられていたけど。理由は体調不良。大阪梅若会のときとは違うけど。
楼雪先生向きに選ばれた曲では無かったか。それでも、楼雪先生は出来なかったか。心配。
ワキが出て来ない能。明治の新作らしい。”桜井駅の別れ”という、明治政府以降戦前までは有名な場面で、天皇支持派の曲。戦後は滅多にかからない。
朝敵足利尊氏を討つために、新田義貞と連合を組んで戦う楠木正成。自分が考える戦略が受け入れられずに、死ぬべき戦いに赴くが、その前に、息子の子方楠木正行を、家臣のツレ恩地満一と共に故郷へ帰し、朝廷(南朝のことだな)を守れ、再建を図れと告げる、別れのシーン。
戦前は好きそうな曲だなあ。なんでも、歌謡曲まであったような名場面だそう。今は、知らん。
いきなり、シテの楠木正成が出てくる。良いなあ、素敵。直面の紀彰先生も捨てがたい。
通常曲でワキのような動きをする。入ってきて語り、ワキ座で居語り。子方やツレ満一と、語る。父と一緒に戦いとうございます、帰れ、なんてね。
結局別れて帰ることになって、ツレ恩地満一の男舞。別れの舞です。シテの舞は無い。
直面の紀彰先生からもワタクシが見えていたのは間違いなくて、何だかこそばゆい感じ。
子方の角当美織ちゃん。角当直隆さんの娘。可愛いね。
これで、今月は、7日の『逆矛』、10日の大阪での『千手』『土蜘』に続いて、紀彰師のシテ4番目。凄いねえ。まだ18日に『定家』がある。
お疲れだろうなあ。