12月4日(土) 国立能楽堂
舞囃子 『高砂』・八段之舞
佐久間二郎
笛:一噌幸弘 小鼓:田邊恭資 大鼓:柿原弘和 太鼓:林雄一郎
解説 本日の見どころ 佐久間二郎
仕舞 『箙』 シテ(梶原景季)観世喜正
狂言 『靭猿』 (和泉流 野村万作の会)
シテ(大名)野村万作 シテ(猿引)野村萬斎 アド(太郎冠者)中村修一 アド(小猿)三藤なつ葉
(休憩)
一管 笛独奏 一噌幸弘
仕舞 『卒塔婆小町』 シテ(小野小町)観世喜之
能 『安達原』 (観世流 九皐会)
シテ(里女 鬼女)佐久間二郎 ワキ(阿闍梨祐慶)野口能弘 ワキツレ(従者)野村琢弘 アイ(能力)高野和憲
笛:一噌庸二 小鼓:田邊恭資 大鼓:柿原弘和 太鼓:林雄一郎
佐久間二郎さんというシテ方観世流(九皐会所属)の個人能の会、三曜会というらしいが、その第10回の会に出かけたのだが、申し訳ない、目的は、完全に人間国宝狂言方野村万作の卒寿記念たる『靭猿』。
今年になって、夏以降、芸能関係だけで、シテ方野村四郎幻雪、落語家柳家小三治と2人続いただけでもショックだったのに、11月に入って17日に大鼓方の柿原崇志、更に28日に中村吉右衛門。この方たちの内、吉右衛門を除いて、亡くなる前に、割と近くに拝見しているのです。
何となく、万作師が不安で、今こそと思って。10月28日に『唐人相撲』、11月21日に『枕物狂』を拝見して、そして、今回『靭猿』を。
人間国宝って、死んじゃうんだ。元気な内に観ておかないと、後で後悔する。
佐久間二郎の幕開け舞囃子『高砂』は、テンポ良く、溌剌としていました。
解説は、まあ、そんなもんね。眠くなった。
仕舞『箙』の観世喜正師は、やはり確りしていて、お上手。若師匠と言っていた。喜之氏が半引退したから、事実上の九皐会トップ。好きだなあ。
そして『靭猿』。6回目のハズだが、万作の会では、19年4月のござる乃座、20年9月の万作萬斎狂言の現在以来で3回目。いずれも、小猿は三藤なつ葉ちゃん。1,2回とも大名が萬斎、猿曳きが万作だった。
今回は、なんと、万作が大名役。大名万作と猿引萬斎の両シテ。卒寿記念だから、ね。
万作が90歳、なつ葉ちゃんが7歳かな。83歳差。こんな舞台、空前絶後だろう。奇跡的な配役。
何回見ても、小猿役の可愛さが眼に行ってウルウルするのだけど、今回は、なんと言っても万作至高の演技に、ウルウルではなくして、じとっと涙が出る。
猿引と小猿を射殺そうと構えるのは、もちろん、弓の絞り方など強さは出なくとも、迫力は十分。
それが、猿の一打ちができずに泣く猿引や演技する小猿を見て、大名万作は「な、討つそ」と決然と。
ここからの小猿との絡み。踊りも、月を見るなり、も、楽しげに戯れる。その様。
小猿のなつ葉ちゃんも、前回よりは演技の上達があるし、猿引萬斎も、やや押さえた演技で、大名万作を引き立てるかのよう。この曲でも、大名が、ホントの主役になった。至芸とはこのことなり。
しっかりと、卒寿の人間国宝の演技、眼と記憶に止める。
一管は笛の独奏だけど、能管という感じはしなくて、自由に。4本の横笛、4本の縦笛を屈指。まあ、こういう笛もよろしいのではないだろうか。
仕舞『卒塔婆小町』は、大師匠観世喜之。下に居ではなくスタート。声も弱々しい。味はあるけど、残念だなあ。無念だな。
能『安達原』。
何回も観ているし、ストーリーや詞章もわかりきる。
シテの佐久間二郎は、確かに、誤りなく、上手に謡い舞うが、もう一つなのは何故か。緊張感が漂ってこない。まだ若いからかな。
前場の詞章で、黒塚のオンナが、「夕顔の宿」とか「それは名高き人やらん」などと謡うから、一体、この前シテ女はどのような人なのだろうかと、考えてしまう。教養ぶりからして、都人のようだし、もしかして、六条御息所の「その後」のオンナか、なんて。このところ、実は寝てしまっていて聞いてないので、どういう解釈で佐久間二郎が謡っていたかわからないのです。
山に柴を取りに行くときは、殺すつもりだったのだろうか、それとも、ホントに親切心だったのか。
不明が多い曲なので、楽しみにしていたけど、疑問は解消されず。
後場の戦いも、もう一つ切迫感というか、侘しさというかが出ていない気がして。
技術ではなくして、心、かな。生意気に。
まあ、今回は、万作の『靭猿』を観に行ったので、他のはどうでも良いのですが・・。
万作に満足でした。なので、この記事の分類は、狂言。