10月15日(金) 国立能楽堂

狂言 『小傘』 (和泉流 野村万作の会)

  シテ(僧)野村萬斎 アド(田舎者)深田博治 小アド(新発意)高野和憲

  小アド(尼)月崎晴夫 立衆(田舎者)内藤連、他

(休憩)

能 『春栄』 (宝生流)

  シテ(増尾太朗種直)今井泰行 子方(春栄丸)水上嘉 ツレ(小太郎)和久荘太朗

  ワキ(高橋権頭家次)福王和幸 ワキツレ(早打)矢野昌平 アイ(従者)野村太一郎

  笛:松田弘之 小鼓:住駒匡彦 大鼓:内田輝幸 地頭:朝倉俊樹

 

今月3回目の国立能楽堂。あと2回あるのです。

 

狂言『小傘』、初めて。こからがさ、と読む。

博奕で失敗した男が、召使いを新発意にして、にわか出家。2人で食い扶持を探そうという。そこに現れた田舎者。新しく堂を建立したが、堂守がいないので、上下の街道に探しに行く。たまたまシテ(僧)と小アド(新発意)に会って、採用することにして帰る。皆を呼び出し、紹介して、堂供養の法事をすることとなり、偽僧らは供え物を要求する。それぞれ身につけたモノを差し出すと、法事となるが、偽僧らは経が読めない。

そこで、「きのう通る小傘が今日も通り候、あれに見咲いたよ、これに見さいたよ」を経の如く節を付け、最後に「なもうだ、なもうだ」と付け加える念誦のようなモノを唱える。こえが大変によくできたモノで、田舎者たちも乗ってきて、一緒に唱えて狂い出す。一種の陶酔状態だろうか。その隙に、シテ偽僧と小アド偽新発意が、供え物を抱えて逃げ出す。やっと気付いた立衆田舎者たちは、やるまいぞ、やるまいぞ。残った小アド(尼)が孫にやろと思っていた小袖を取られた、腹立ちや、腹立ちや。

小歌を経の如く節付けして唱える、それにトランス状態になっていく田舎者たち。ある意味、宗教などというモノは、そんなモノだろう、という心理劇か。

面白い。

 

能『春栄』、これも初めて。

宇治橋の合戦で、鎌倉方の捕虜となった幼い春栄丸。宇治橋の合戦とは言っても、有名な以仁王と頼政vs平家の戦いでは無くして、想像上のモノか。登場人物も、全員創作上の者たち。奉行のワキ高橋家次が春栄丸を引き連れて、三島に来る。そこに、春栄丸の兄シテ増尾太朗種直が、従者のツレ小太郎を連れて、縁者だというので現れ、弟の子方春栄丸に会いたいと。春栄丸は、兄と知られると首を取られるのを恐れて、縁者ではなく家人だと言い張り、会おうとしない。不審に思ったワキ高橋が騙して春栄丸をシテ種直に会わせると、家人としたのは殺されることを恐れて、だと。

弟思いのシテ種直は、母の悲しみはわかるが、ここはまず自らの首を出して、弟春栄丸を救い出そうとする。それがかなわぬならば、一緒に死のうと。

感激した奉行ワキ高橋は、何とかしようと思うが、無理。実は、ワキ高橋は、春栄丸と同年齢の子を失い、春栄丸を養子にしようかと思っていたのだけど。兄弟は、それぞれ形見の品を従者に託す。

いよいよ、首を打ち落とそうと太刀を構えるところに、早打ちが現れ、赦免すると。喜んだ皆々。ワキ高橋は、春栄丸に太刀を与えて養子とする、これで、シテとワキ、子方は親子兄弟のちぎり。

シテも全員、直面で、顔つきが難しい。

アイも初めから最後まで登場していて、まさしく物語の中の重要人物。

子方の水上君は、13歳。その知り合いか、中学生くらいの客が固まってきていた。良いことだ。声も良いし、大きな声で。動きもキビキビとしていて。

赦免されたうれしさに、ワキが舞を舞う。これは珍しい。背の高いワキ方の福王さんが、きっちりと舞う。

それを受けて、シテ種直が男舞。勇壮に。

舞はここだけで、それまでずっと語りばかり。劇を見ているよう。地謡は謡だけど。

こういう、お能もあるんだ。新しい発見。

小鼓の住駒さん、あっと驚く美声。

 

高等遊民。段々このブログに疲れてきた。最初の頃の、お能に関するブログは、感激が先に立って書いていた。この頃は、どんなだったか、やや見巧者になっているのかもしれないけど、ブログがキツい。もっと単純に気持ちだけ書けばよろしいのかも。

記録の面もあるので。日記なんだから。曲と出演者だけでも良いのかも。