11月29日(日) 国立能楽堂

文化庁芸術祭主催 ◎釈迦と閻魔

朗読 『蜘蛛の糸』

  原作:芥川龍之介 朗読:榎木孝明 琵琶:須田隆久

新内節 『朝比奈地獄廻』

  弾き語り:新内仲三郎 浄瑠璃:新内多賀太夫 上調子:敦賀喜代寿郎

(休憩)

能 『大会』(ダイエと読む) (観世流 宗家)

  シテ(山伏 天狗)浅見重好 ツレ(帝釈天)坂井音隆 ワキ(比叡山の僧正)則久英志

  アイ(木葉天狗)善竹隆、善竹隆平、善竹大二郎

  笛:杉信太朗 小鼓:住駒充彦 大鼓:柿原弘和 太鼓:大川典良 地頭:岡久広

  面:前シテは直面 後シテは「釈迦」「大べし見」 ツレは「天神」

 

なんとも、妙な公演会に行ってしまった。

文化庁芸術祭というのは聞いていたが、主催公演と、参加公演があるのですね。これは主催公演。

前日も主催公演があって、講談『しばられ地蔵』、落語『地獄八景亡者戯』、素囃子『神舞』、狂言『朝比奈』・野村萬斎が演じられた。これも◎釈迦と閻魔という副題付き。『地獄八景』は聞きたかったが、日フィルの定期演奏会とも重なっていたし、全編口演すると1時間以上かかるはずが一部省略であったことから、止めた。萬斎の『朝比奈』は観たかったな。一度観たよね。

 

朗読は、ご存じ芥川龍之介の『蜘蛛の糸』。真っ暗になった舞台に、色紋付き袴の榎木さんと、事前予定に無かった琵琶奏者。琵琶は、極小さい音で。役者だから朗読は上手だけど、だから何?という感じ。文化庁芸術祭実行委員会って、何を考えているんだろう。

 

新内節って、何?ここから出発でした。演目が『朝比奈地獄廻』だったから、狂言の『朝比奈』と関係あるのかしら、という程度。

浄瑠璃の一派で、花街の流しだったんだって。演者のお名前が新内だったり、敦賀だったり、それらしいお名前で、伝統が継承されているんだろうと思うけど、現代において、稽古などもしているんだろうか、有料の公演会もあるのだろうか、どうやって生計を立てているんだろうか、などとそんなことばかり考えていた。

浄瑠璃というのが三味線だけ弾く人、弾き語りは、三味線を弾きながら歌う、上調子というのは歌うだけ。声は、高い声で、情緒溢れるといえばそうなんだろうけど、何だかねえ。

3人とも、黒紋付き袴だし。内容はまったく理解できない。ちょこっと、笑いを取る節もあるらしいが、わからない。わかる人もいた。笑っていたから。

もう結構。

 

能『大会』は初めて。幽玄と幻想的なお能とは違って、申楽に近いのかな、という感想。

いきなり、囃子も無くワキが登場して、脇座に着席して、語り出す。

地謡の節謡があって、前シテ天狗が直面で登場。後はワキと前シテの語り合い。語りばかり。あとで、アイ狂言でわかるのだけど、天狗が鳶に化けていると、こども達につかまって殺されそうになったのを、ワキ僧正に助けられた、そのお礼にと、霊鷲山の釈迦説法を再現して差し上げましょう、という。絶対にその気になって拝むなよと約束させて、去る。

 

ここで、アイが3人登場。中心人物は、「嘯吹」の面、他は「武悪」の面。珍しい。そこで、いつも通り解説する。木葉天狗というのは、愛宕神社の大天狗の部下というか、木っ端な天狗。大会を再現したらば、出演するのだが、どの仏に化けようかなどと相談。退場。こういう狂言方の役割もあるんだ。

 

作り物の一畳台が正中に出される。台の上には椅子のような、獅子の座。

そこに後シテ(釈迦、実は天狗)が登場する。初めて見る「釈迦」の金色の面。巻物経典ももって、厳かに。獅子の座に座って、左右には普賢菩薩、文殊菩薩がいるらしい。他にも、多数の菩薩達がいるとの地謡。阿難の大声聞でありがたき景色。という設定。

そこで、驚いたワキ僧正が感動のあまりに、合掌して、礼拝してしまう。

と、一変して囃子方が早く演奏。まず、舞台上で物着して、釈迦の装束を脱いで、下に着ていたんだろう天狗の衣装。巻物に変わって大紅葉の天狗用団扇、さらに、「釈迦」面を外して「大べし見」面へ。

ツレ帝釈天が登場して、怪しからぬ、化け物め、ということで、正体がばれた後シテ天狗を追い回して、戦うシーン。ここの、早笛、舞働きは、まあ飽きないけど、幽玄などとは無縁。

やっつけられた後シテ天狗がおそれ奉ると、ツレ帝釈天は天に戻っていく。後シテ天狗も隠れてしまう。序破急で、ピタッとお終い。

 

謡や舞に重点があるのではないから、ストーリーの説明だけになった。涙が出るような感動はまったくなくて、あらあら面白や、というお能でした。

お能を観に行った気がしない。何だかなあ、という日でした。ま、ナニゴトも、経験。『大会』は解説が見つからないのです。

どうして芸術祭実行委員会は、この曲を選んだか。