10月15日(木) 横浜にぎわい座
開口一番 春風亭与いち 『つる』
春風亭一朝 『紙屑屋』
春風亭一之輔 『三井の大黒』
(中入)
一之輔 『代書屋』
一朝 『居残り佐平治』
開口一番は、ダメ。つまらない。あまりのつまらなさに、どうやってあの噺をするのかと気になって、寝なかった。
いっちょう懸命やりますと、ご存じご挨拶で、一朝。『紙屑屋』は、紙屑を仕分ける時の、掛け声や、小歌、都々逸が決まらないとつまらないけど、一朝は、こういう江戸風が上手。そういう意味で芸人。江戸の気風というか、粋というか。
何だか、聴いていると、古今亭志ん朝の話しぶりが浮かんできて。古今亭と春風亭とは近いのだろうか。でも、絶対に志ん朝の方がうまいから、そういう意味で残念だねえ。比較されると負ける。
一之輔が登場した時に、思わず、「待ってました」と声を出してしまった。いかん、いかん。確かに久しぶりの一之輔を期待はしていたけど、今回は親子会で、初めから一朝がトリと広告されているのだから、しかも、師匠の前で、こういう掛け声は、まずかった。
演目はネタ出しの『三井の大黒』。まあ、中トリだからね。爆笑ネタでは無くて、どちらかと言えばじっくり系統。飛騨の名工甚五郎が、よく知らない江戸に出てきて、火事で焼けるからという理由でやっつけ仕事の多い江戸の大工達に交じって、腕をそっと披露し、大黒様を彫って、三井の番頭に頭を下げられて、70両頂く、それを江戸の頭領に上げてしまう、というお噺。
こういう噺も、一之輔はできるんだ、と。
仲入後はまず一之輔。何かと思ったら『代書屋』。一之輔の代書は、以前に聴いていて、あのときはホントに大爆笑で、腹を抱えて、笑い転げたので、今回も、いよっと。
本籍地を、大阪から、東京の小岩に代えて、小岩自虐ネタで。あまり力は入っていなかったようだけど、ちゃんとそれなりの爆笑。で、あれってところでお終いにしてしまう。時間を見ていなかったけど、15分位かしら。
トリはネタ出しの『居残り佐平治』。時間は十分にある。品川に乗り込んで、居残りを決めてそれを通す様子、居残ってからの若い衆というか、幇間の振りが、また、粋に決めていて、やはり素晴らしい。
このネタは、確か、落語ディーパーで、一之輔が解説していたモノ。そういう情報は、師匠の一朝も知っているだろうから、やりにくかったんでは無いだろうか。居残りさんが、常連で、置いてけぼりされたお客と酒を飲むシーン。居残りからいっぱい下さいという流れと、お客からまあ一杯飲めという流れとあるらしいが、一朝は後者。これは落語ディーパー知識。でも、こういうところに、それぞれの噺家がこだわって、どっちかを考えるのだね。
こういう廓ばなしも、一朝の得意とするところ。そんなに変化は無いけど、きちんと、じっくりと、粋に決めていました。端折ること無く、面白く。
さすが、一朝のトリでした。一之輔に「待ったました」して、申し訳なかったです。この噺の前に「待ってました」すれば良かった。それだけの出来のいい口座でした。ゴメンナサイ。