10月5日(月) 横浜にぎわい座
開口一番 春風亭いっ休 『桃太郎』
『磯の鮑』
橘家圓太朗 『化け物使い』
(仲入)
『快僧玄若坊』
結論から書いちゃうと、この日の落語会は、ホントに良かった。三三はうまい。
木戸銭3200円は、安いと思った初めての落語会。
開口一番の前座は、一之輔の弟子。三三の弟子ではないのはどうしてかな、と思ったけど、無い話しでは無いらしい。三三の押しなんだろう。
先日も、確か、いっ休の前座聴いたよね。その時も『桃太郎』だったかな。出来は悪くなかったよ。相変わらずの早口だけど、前より話が進んで、何より、寝なかった。開口一番で寝なかったのは、珍しい。
見込みがあるかも。丸坊主、つるつる頭の前座。
『磯の鮑』。三三は、もっとじっくり語る噺が上手なんじゃないかと思っていたけど、こういう与太郎ばなしもきちんとできて、よく笑えた。
女郎買いで、うまく行く秘訣を、ご隠居にお稽古して貰って、実践してみる噺。ご隠居の、嘘だと思ってはいるが、紹介状に従ってお稽古を付ける段が、また上品に楽しい。
この段階で、三三の評価はアップ。
ゲストの橘家圓太朗。マクラがとても面白くて、長くて、このままおしゃべりだけでお終いになってしまうのかと思ったくらい。「辛抱」と言うことを題材に、縦横無尽。で、どうなっちゃうの、と思ったらば、「辛抱」繋がりで、『化け物使い』へ。
但し、一つ目小僧の部分だけで、狸が出てきて、チョン。もっと化け物沢山出てきた噺だったよね。時間配分で、きちんと長いマクラに合わせて纏めるんだから、熟練の真打ち。
メインは、柳家三三の『快僧玄若坊』。幕末から明治にかけて活躍した、柳派の談洲楼燕枝作の、『嶋鵆泊白波』(しまちどりおきつしらなみ)という長編人情噺(怪談話)を、三三が復活させて、その一部が今回の口演。
今回の噺の前にも、後にも、物語があって、吉原の火付け火事の噺や、三宅島に島流しになる噺など、いっぱいあって、それを何日かに分けて三三が口演したこともあったらしい。
今や、三三しかできない噺。それをじっくりと、たっぷりと、怖さで。ところどころ、チクッとくすぐりを入れて笑いも取る。
五戒の破戒僧を威したさんぴんを、逆に、威すというか、うまく丸め込んで、威し金を負けさせた上、大枚の上前を跳ねる下りは、あれまあ、ああいう風に弁護士時代に示談交渉すれば良かったか、なんて不穏に思ったりするほどの、上出来で、口が達者というか、それをすらすらと、口演する。それに従って、段々説得されて行ってしまうさんぴんの心境。
説得的だなあ。
殺してしまう風景、死体を俵に包んで運ぶ辺りの風景、よくできている噺だし、うまいなあ、と。
もうかなりの数、にぎわい座などに通っているけど、ホントに、終わった後にあの木戸銭安い、って思った。
落語は沢山聞かなくちゃ良さが解らないかも。でも、うまい噺家の、上手の回に当たると、飛躍して面白いと思う。
終わって、興奮してしまって、飲み屋へ。落語ばなしで盛り上がる。