7月9日(木) 横浜にぎわい座
開口一番 柳家り助 『出来心』
『粗忽の釘』
『大山詣り』
(仲入)
『お初徳兵衛』
客席は、発売した市松様席すら埋まらず、ざっとみて、1階席は5分の1、2階席は2人。
淋しいけど、仕方ないし、それでも通うファンは、熱心なのです。
そんな中でも、雲助は、腐ることなく(と見えた)しっかりと。
開口一番は、まったく、まったくダメ。雲助とどういう関係か。
『粗忽の釘』。登場した雲助が、まず短いのを1席、長いのを1席、休憩頂いて、最後ももう一席お付き合い願います、と始める。
いつもの挨拶だろうけど、丁寧さが感じられる。
『粗忽の釘』のなかの、ちょっと色っぽい部分、女房とのなれそめを語り出してしまう部分、あの真面目そのものの顔の雲助が、ちょっこっと色っぽく話すと、すごく色っぽくて、ゾクゾクする。想像の世界。
そのまま、引っ込むことなく座りっぱなしで、『大山詣り』。雲助は、お茶飲まないのですね。出てもいない。
このお話も、藤沢宿の女郎買いに重点を置く噺家もいるのだけど、雲助は、坊主にされた復讐に、熊さんが留守の女房連中をみんな坊主にしてしまうおかしさを。だましのテクニックというか。
上手いねえ。だから、最後の落ち「けがなく良かった」が生きてくるのかな。
『お初徳兵衛』。前半は、『船徳』。でもこの部分は、さらっと、徳さんこと若旦那の妙ちきりんな船頭失敗話は少なく。それから3年以上経って、上手になった船頭の徳。夏の雨の中、船頭と芸者の二人きり同舟の御法度を犯す中で語られる、お初の思い初め、禊ぎの語り。それをも犯してしまう、2人の憐情と、恋情と、雷雨の河面。志ん生は、お初の裾が雷に驚いて乱れて白いふくらはぎが見えるる様を語るが、雲助は、ビックリして思わずしがみついてしまって、徳兵衛もそっと肩を抱く、という超色っぽい、大人の色気たっぷりに。
良いねえ。巧いねえ。これも、絵が見えるよう。
五街道雲助は、確か、紫綬褒章を受章している。
今、定期的に、にぎわい座に出演している噺家の中では、一番巧いのではないかな。正統派噺家のピカイチだと思う。
前の円楽があまりだったので、比較しても素晴らしい。これが、にぎわい座の真ノ復活。
高等遊民。これにて、国立能楽堂、横浜能楽堂、にぎわい座の復活完了。あとは、みなとみらいホール、鎌倉能楽堂か。