9月27日(金) 代々木能舞台

仕舞 『弱法師』 武田文志

仕舞 『井筒』 小早川修

能 『融』(観世流) 十三段之舞

   シテ(汐汲みの尉・融の大殿の亡霊)浅見慈一 ワキ(旅僧)宝生欣哉 アイ(清水寺門前に住むもの)山本則重

   笛:一噌幸弘 小鼓:大倉源次郎(人間国宝) 大鼓:佃良勝 太鼓:梶谷英樹 地頭:浅見真州

   面 前シテ:尉 後シテ:中将か

 

特別企画で、夜7時に開始して、代々木能楽堂の脇正面に当たる庭に、蝋燭が並べられる。極めて幻想的。

 

6時頃から、自由席なので並んだが、既に30人ほどの先客。あそこは坂になっていて並びにくい。

 

仕舞は、こう言っちゃあなんだけど、我が師梅若紀彰が、いかに上手かということが解る。声も違うし、舞も、同じ観世流だとは言え、フラついたりはしない。

 

『融』初めて。源融(河原の左大臣)がかつて造営した「六条の河原院」で、今は荒れ果てているところに僧が来ると、源融の亡霊である汐汲みの尉が現れ、かつての融の話をし、庭の歴史を語り、見える山々の有名なところの解説をする。

この庭は、現在は東本願寺の飛び地である枳穀邸と言われている。去年かな、行ったことがあって、ああ、あの庭か、あの池か、あの築山かと思い出される。観光する前に、この『融』を知っていたらば、もっと味わい深く観光できたなあ。

 

尉が、あそこは音羽山(清水)、逢坂山は見えないよ、今熊野だよ、(伏見の)稲荷山だよ、深草山だよ、ずっと西に大原だよ、嵐山だよ、と解説するが、枳穀邸から見えるのかしら。木に登るとか、若干鳥瞰しないと。これは能のイリュージョン。

 

間狂言は、山本東次郎家。セイスイジと発音していた清水寺門前に住まい致すもの。

 

後場は、後シテの舞が素晴らしい。小書きにある十三段之舞とあるように、中将の面をかけた融の亡霊の舞が続く。何分舞っていただろう。早舞が調子に乗っている。観世の舞、このシテの舞はしっかりとしていて、腕も上がり、サユウもきちりと。舞台照明が暗くて、見所の明かりは消され、中将の面が幻想的に浮かび上がる。素敵。

橋掛かりの方に移動すると、ぼんやりとしか見えないのが、素晴らしい。

面の向きで、庭が荒れ果てた融が泣きそうにも見える。

 

こういう幻想的なお能も素晴らしい。ちっとも眠くならない。見所も静まりかえる。幻想の中で終演。

素晴らしいお能を見せて頂いた。

代々木能舞台は、まあ屋外の舞台だから、風を感じるし、防犯灯の明かりが一瞬月に見えたり。来月、また行くのだ。