9月20日(金) 国立能楽堂
狂言 『吹取』 (大蔵流 山本東次郎家)
シテ(男)山本則孝 アド(何某)山本泰太郎 アド(乙)山本則秀
笛:小野寺竜一 面:乙
(休憩)
能 『蟬丸』 (観世流)
シテ(逆髪)野村四郎・人間国宝 ツレ(蟬丸)大槻文藏・人間国宝 ワキ(藤原清貫)福王茂十郎
アイ(博雅三位)山本則重
笛:一噌庸二 小鼓:大倉源次郎・人間国宝 大鼓:亀井広忠 地頭:梅若実・人間国宝
面:シテ「逆髪」(大和・作) ツレ「蟬丸」
国立能楽堂は、ほぼ、月の第1週水曜日に昼の定例会、第3週の金曜日に夜の定例会をやっている。全部行こうと思うのだ。施設は良いし、安い。そこの安い席ばかりで、中正面。あぜくら会に入っているので、消費税が上がっても2800円の10%引き2520円。あぜくら会員は一般より一日早く先行予約も出来るので、ほぼ確実に席は取れる。
『吹取』は初めてと思う。妻を得ようと五条大橋で笛を吹くご宣託。代わりの何某に吹いて貰うが、現れた女性は、醜女で、押し付け合い、乙はじゃあ両方と結婚しようと言うが、二人とも逃げ出す。
山本則孝、泰太郎両人は安定した演技。乙面は醜女の象徴。
『蟬丸』。素晴らしいお能を見せて貰った。初めての曲だ。
人間国宝が4人も出演。国宝だらけ。
まず、ツレ「蟬丸」が入場するが、正中にすっくと立つと、ピクリともしない。舞台に根をはった大樹の感じ。それが、5分、10分、15分。動き、謡うのはワキとワキツレだけ。道行きで逢坂山に着くまで。そこで、初めて少し動いて「いかに清貫」となる。さすが、人間国宝大槻文藏。
囃子方の大鼓は僕が好きな亀井広忠。小鼓の人間国宝大倉源次郎は、いい音を出し、掛け声も素晴らしい。今まであまり注目してこなかったが。さすが。
僧形に着替える物着で、地頭の人間国宝梅若実が、やっと、登場。脚が悪いから最初から出ては来ない。でもさすがの美声。
シテ「逆髪」人間国宝野村四郎は、ゆっくり、ゆっくりと橋掛かりから登場。右手に笹を持つ。笹が、ずっと小刻みに揺れる。揺らしているのかと思ったら、震えてしまうのではないのかと疑問。震せんというのか。
偶然に出会う醍醐天皇の第3子「逆髪」と第4子「蟬丸」の姉弟。いずれも天皇から疎まれ、「蟬丸」なんて、本当に逢坂山に捨てられる。放置されるのだ。虐待だね。「逆髪」は知識人でも狂気。そして、別れ。逢って、別れる。その心情が豊かに表現される。
この曲は、舞が無いのだ。すべて、謡。シテやツレ、地謡。ちょっとした動きで感情などを表現する、出来るのだ。
まず「逆髪」が退場した後、ゆっくりゆっくりと「蟬丸」も退場。その緊張感。拍手は出来ない。
人間国宝のシテ野村四郎と、人間国宝ツレ大槻文藏。どっちがシテかツレか。緊迫の遣り取り。
でも野村四郎、ちょっと心配。震せんだよね。
人間国宝地頭梅若実も、椅子に座っても、途中入場。最初から座るのは辛いのかな。
小鼓方人間国宝大倉源次郎は、元気。
高等遊民。素晴らしい、緊張感溢れるお能を拝見させていただいた。こういうお能が観られるのは、偶然だから。一期一会。