7月27日(土) 横浜能楽堂
狂言 『寝音曲』 シテ(太郎冠者)山本則俊 アド(主)若松隆
(休憩)
能 『船弁慶』(観世流 梅若) 小書「重前後之替」「船中之替」「名所教」
シテ(静御前 平知盛)梅若紀彰 ワキ(武蔵坊弁慶)森常好 アイ(船頭)山本東次郎
大鼓:國川純 小鼓:大倉源次郎 笛:杉信太郎 太鼓:小寺真佐人
面:前シテ(静御前)「若女」(入江美法作) 後シテ(平知盛)「三日月」(作者不詳)
東次郎さんは、今年はこの規格に力を集中しているのか、他ではめったに見られない。いつもの通り、折り込んだ番組表と、「なぜこの曲を選んだか」という東次郎さんの自書があり、曲の解説と共に、極めて含蓄のある、有意義なモノとなっている。絶対のこれは処分できない。
『寝音曲』。太郎冠者役の山本則俊さんは、今回はきちんと声が出ていて、よく聞こえたし、謡も舞も見事でした。先日は、チト体調が悪かったか。もうお歳だから、と心配はするけど。膝枕で上手に謡ったりわざと変に謡ったりの変化が見事で、いつ変わっていったか、微妙な変化。東次郎家では「舞歌二曲」すなわち「舞と謡」を大事にするらしいが、見事です。
『船弁慶』。東次郎さんの企画だからアイを楽しみにしていたのは勿論だが、教室の先生の梅若紀彰さんがシテを務めると言うことで、期待大。
紀彰先生の声が聞こえてくると、良い声だなあ、と。贔屓目ではなく。
前場の静御前の舞は、ゆったりとした優雅の舞で、習ったばかりの型も多く見えて、ああ、ああいう風に舞うと綺麗に見えるんだ、ああいう風にお扇子や腕を動かすんだと。しかし、あれだけゆっくりと、優雅に舞うと、とても全身の筋肉を使うはずで、大変だろうなと。自分が練習してみてわかること。
アイの東次郎さんは、かなり早い場面から舞台上に。前回は茂山家だったが、やはり、オーラが違う。「名所教」という小書きが付いているが、狂言方のアイもフルバージョン。
後場の平知盛の勇壮な舞。これも体力を要する。爪先立ちになったり、大きくはねたり、廻ったり、戦いのシーンだから。途中滑って尻餅をついてしまったり、最後退場時にくるくる回るがお幕の柱にぶつかってしまったり。きっと、私たち素人の練習に力を使ってしまって、お疲れになっているんだと、申し訳ない気持ち。
東次郎さんの企画だからこそ、シテ方もワキ方も力を尽くしたと思う。まったくカットすることはなく、フルバージョンの『船弁慶』。見応えがあったと思う。パイプ椅子も並んで、超満席。記録にも取っただろう。
狂言の企画だったけど、お能が素晴らしく、ブログのテーマを「能」にしてしまった。