7月20日(土) 横浜能楽堂

尺八古典本曲 神令 『鶴之巣籠』

地歌 藤本昭子 『難波獅子』

箏曲 萩岡松韻 他 『五月晴』

(休憩)

狂言 『鷺』 (和泉流 山本東次郎家)

    シテ(太郎冠者)山本則秀 アド(主)山本則重

能 『大典』 (観世流)

    シテ(天津神)片山九郎右衛門 シテツレ(天女)味方玄 ワキ(勅使)宝生欣哉

    面:シテは邯鄲男(作者不詳) ツレ節木増(作者:出目満茂)

 

改元(新天皇即位)を祝しての、横浜能楽堂特別企画。

第1日は琉球舞踊の古典の中からの祝儀曲をやったらしい。で、今回は2回目。大正天皇即位皇位継承の祝宴で、皇居内に設けられた能舞台で演じられた新曲『大典』を現代風に改詞章を行っての上演。

第1回にも来ていたけど、今回も秋篠宮紀子が、今度は子供を連れずに鑑賞。ために、2階席がクローズされ、2階のレストランでパンを食べようと思ったのに出来ず、2階のトイレが使えないから女子は休憩時間1階トイレに長蛇の列。大いに迷惑だが、まあ、天皇家に関することだから良いか。天皇や皇嗣が来ても良さそうなんだけど。東京と京都でも上演されるらしいけど、横浜能楽堂は警備上やりやすいんだな。2階をクローズにすれば、隔離しやすい。観世能楽堂や国立能楽堂ではこういう隔離は出来ない。

 

尺八、三絃(三味線)と一緒に歌う地歌、箏曲とみんな、祝儀曲。尺八の鶴は、音と声が合っているし、めでたい鳥だからね。地歌の藤本さんがとても良い声。箏の萩岡松韻さんは、女性のような高い声。初め、一体誰が謡っているのと。

 

狂言『鷺』は、もと合った鷺流の系譜らしいが、1987年に復曲。玉三郎の『鷺娘』を思い出すような。狂言方も努力した。鷺が歩く様を表す足使い。笑えるような狂言ではないけど、これもおめでたいし、山本則秀則重兄弟がしっかり訓練してきた風が伺える。

 

能『大典』。大正時代の詞章謡本が復活販売されていたので、記念に購入。大分改詞章されている。神国やらなんちゃらいう言葉は書き換えられていた。平安神宮が伊勢神宮になったのはなぜだろう。

君が代云々が出てくる。これは地歌にも出てきた。こういう国歌って面白い。学生時代、外国人留学生グループと飲んだ時、それぞれ歌うことになって上手く歌が出てこないから「国歌を歌って」と英語でリクエストしたら、ダメだって。つまり、酒飲み場で国歌を歌うことは出来ないと。考えれば、国歌を歌う時には直立し、腕も胸に組むことをする国も多くて、そうしないとメダルを取り上げるだの。日本国の国歌は、勝手に、地歌や能の詞章に取り入れられている。「君が代」は政治的に受け入れられないけど、国歌としては認めないけど、大嫌いだけど、ああ、こういうこともあるんだと、妙な感心。

おめでたいという詞章ばかり。舞は、シテツレの天女の舞、シテの豪壮な神の舞が素晴らしく、身震いと感動と。シテが勢い余って壇にぶつかって尻餅と膝をつく場面もあったが、まったく関係なく進行。素晴らしい。地謡もツヨ吟で激しく、大好きな大鼓の亀井広忠さんを含む囃子方も全力投球。慣れた曲ではないから、相当訓練したのだろう。

舞も謡も、大きく、豪華勇壮で、前日観た宝生流とはやはり違うなあ。観世流の方が良いなあ。

 

前日は寝てしまったが、今回は寝ない。涙まで流して左翼爺が。要員は色々アルと思うが、一つには役者の熱意もあるのではないだろうか。力の入れようがビシビシと見所に伝わる。見所もそれに同調して、心地よい緊張感。能は素晴らしい。でも、あんな素晴らしい舞を観ると、まもなく行う発表会での仕舞は、恥ずかしい限り。プロは違う、と実感。