5月3日(金) 鎌倉能舞台
講演 源平合戦を彩る女達 思いは木曽義仲とともに 小林健二(国文学研究所教授)
狂言 『樋の酒』 シテ(太郎冠者)内藤連 アド(主)月崎晴夫 アド(次郎冠者)岡聡史
能 『巴』 シテ(里女、巴御前)奥川恒治 ワキ(旅僧)大日方寛 アイ(里人)石田淡郎
面:前も後も、増女(現代作者)
ゴールデンウィークの鎌倉だった。藤沢から江ノ電に乗るときに、外のデッキまで並ぶ。この時期の鎌倉はこんなんだったと後悔したが、まあこれも一興。
講演は、相変わらずどれも面白くない。能の見どころ解説だが、知っているし。眠くなる。
『樋の酒』は何度も。しかし、太郎冠者と次郎冠者に留守を頼むと、盗み食いされる。附子も同じ。困ったもんだが、こんなんだったのかなあ。
以前は、最後に主に見つかってからのドタバタが面白いと思っていただけだが、今回は、二人が酔っ払って、謡や舞をするところが、初めて意味が聞き取れて、良かった。こういう楽しみなんだね、当時は。
『巴』。平家物語巻九の「義仲最後」の段から。しかし、今井四郎兼平の武勇ではなく、女武者で美人の巴御前に焦点を当てる能。前場はいつも通り、緊張の中で。ワキの語りなど。今回の出色として、アイ狂言の石田淡郎をあげたい。野村万作家だが、ロンドンで劇もやっている国際派で俳優。さて、狂言は如何にと思ったら、しっかと前を向いて、聞き取りやすい、声と口調で、もちろん噛むことなくして、語っていた。立派な狂言方ではないか。これに演劇もできるとあっては、人気が出そうな。
後場は、ひたすら巴御前の長刀使いが格好いい。義仲から、去れと言われてともに死ぬことを拒絶された時の、肩を落とす様。それでも、すっくと立ち上がって、最後の戦いに臨むかっこよさ。自害した義仲を見つけて、悲しみ、武装を解いて故郷に帰る様子。平家物語では、深田に馬の脚を取られて射貫かれて殺される、アイ狂言でもそう語っているが、後場の詞章では自害になっているのは、何故か。
面が素晴らしい。前も後も同じ面だったらしいが、勇者に見え、悲しみに耐える女性に見え。
今回は、正面の椅子席の最前列中央。良い場所だったので、面も、舞もよく見えた。