4月27日(土) 横浜能楽堂
『独り松茸』 シテ(何某)茂山あきら
休憩
『唐相撲』 シテ(帝王)茂山千作 アド(日本人)茂山千五郎 アド(通辞)茂山七五三
立衆(唐人)茂山千三郎、宗彦、茂、逸平、千之丞、など28名
副題に、30人超VSたった一人、とあったが、『唐相撲』舞台上には、シテ・アド3人以外に、立衆、囃子方、後見を入れるとなんと40人弱が乗るという大所帯に対して、『独り松茸』は、通常狂言は2人以上なのに、たった独り芝居ということから。
『独り松茸』は、松茸狩りに出かける独りの所の者(扮装は太郎冠者)が、山に入って、蛇にあったり、滑りそうになったり、イノシシに追われたりしながら松茸を探し、見つけた松茸で一人宴会を始めてしまうが、最後は猪に追われて、松茸を全部揚げてしまって逃げ出す話し。
狂言でもなんでも、独り芝居は難しいと思う。とりわけ狂言は舞台装置もなければ、音響もないのので、順番など間違えないだろうかと心配になるほど。2人以上いれば掛け合いだから間違えないだろうし、音響効果の音楽など流れればそれで記憶喚起になるし、そんなのがないと順番を間違えたり、すっ飛ばしたり、絶句したりしないのだろうか。でも、さすが、伝統芸術で、茂山あきら。しっかりと、ちゃんと。
『唐相撲』は、これが狂言か?というドタバタ劇というか、コントというか、自由なお笑いというか。そんな中でも、大御所茂山千作が引っ張っているのだ。真偽のほどは確認できないが、旧満州にいた関東軍の慰問のために作られた曲だとかないとか。大蔵流にも和泉流にもある。
唐音を茶化した台詞が、ちょっと心に痛い。昔、「何々アルよ」とか、わざと濁音を破裂音にする漫才みたいなモノがあったが、あれは清国以来の中国人を馬鹿にしたものだったじゃん。それが堂々と・・。
帰国したい日本人相撲取りが、皇帝の前で唐人を次々に投げ飛ばす。通辞に指名された唐人が、イヤイヤなのもいるし、闘志溢れるモノもいるが、色々な「技」で戦うが、日本人が勝ってしまう。アクロバット的な演技などもあって、舞台上から拍手を求めたり、面白いから拍手したり、古典芸能の狂言としては、ん?だが、でも、ともかく面白いことは面白い。単なるドタバタ劇にはしない。
唐音の囃子や、歌、合唱など、きちんと練習しなければできないし、アクロバチックな演技も、練習を積まないと怪我しても困るし。大変な曲だと思う。そんな中でも、茂山千作(シテ皇帝)はさすがの演技力と、圧倒力。
観客の中には、京都弁を話す親子ずれも多かった。茂山家が京都だから、出演者にも、子方も多かったから、家族総出で作り上げて、その成果を京都から見に来たのかな。
めったに見られない曲だとか。でも、高等遊民は、7月7日にも国立能楽堂でやることを発見し、すでにチケットを入手。大蔵流5家の合同だとか。さて、どんなんかな。帝王大藏彌太郎、日本人山本泰太郎、通辞茂山忠三郎という配役らしい。山本東次郎さんは出ない。
ちゃんとした狂言なのかも知れない。面白いが。