4月20日(土) 横浜能楽堂
『翁』 シテ(翁)山井綱雄(金春流) ツレ(千歳)山本凜太郎 ツレ(三番三)山本東次郎
『三社風流』 シテ(天照大神)山本則俊 アド(春日明神)山本泰太郎 アド(八幡大菩薩)山本則孝
面:翁「白式尉」(赤鶴作・金春宗家蔵) 三番三「黒式尉」(古作・山本東次郎家蔵)
今日の翁は、歴史に残さねばならない。必ず記録にとどめるべきモノだろう。
『三社風流』は、小書きのようなモノで、三番三が、揉ノ段を終わった後、鈴ノ段に入るわけだが、その時に、具足(鎧)を着用する、そして舞い始めると三体の神が見物に出てくるというモノ。
まず、式に則って、火打ちが行われて、しずしずと千歳と翁、三番三が登場する。もうここで爺はウルウル、感動、緊張感に打ち震える。で、泣く必要はないのだけど、涙腺が弱い。千歳は、若い凜太郎君。立派にこなしている。
翁が、正面で、深くお辞儀をするが、これが美しい。厳か。
凜太郎君の千歳の舞も、ちゃんとできていたよ。東次郎さんの孫の年代では、凜太郎君しかいないのか、抜擢されたのか、東次郎さんは、きちんと、一緒に努めて、観ておけよ、という遺言のような感じ。1月に観世で観たときは、千歳はシテ方が演じていた。観世流か。
シテ翁が白式尉の面をつける。金春宗家の面。翁のような神事の能は、各流派、各家でそれなりの面を持っているはず。それが今日登場。東次郎さんの気迫と意気込みに、金春宗家も応じなければならぬ。
いよいよの三番三、東次郎さん。御年にかかわらず、力強く、テンポがややずれるところはあるが、調子よく。テンポずれは鼓方が悪いのだ。合わせろ。揉ノ段は力強く、土を踏み込む。それの力と迫力、気迫がビンビン伝わる。鈴ノ段になると、重い具足をつけて舞う。大丈夫かしら、重いのだよね。配られたパンフによると、300年以上の間演じれられていなかったものを東次郎さんが復曲しうえ、1988年以来ということ。30年ぶりだぜ、当時は東次郎さんも50歳代。いま、80歳代の東次郎さんが、重い具足をつけて鈴ノ段を舞う。すごいことだよ。感動的だよ。みんな観なくて良いの。きっとこれで最後だよ。外の狂言方で、具足付きの鈴ノ段を舞える人がいる?記録!記録!横浜能楽堂、ちゃんと記録しているよね。後で、公開してよね。正面からも見たいよ。ホントに最後だよ。
囃子方も、シテ方も、地謡なども、東次郎さんの気迫につられてか、力強い。1月の観世で観たときより感動レベルが高いのは何故。1月の三番三は、山本泰太郎さんだった。
今回は、高等遊民のお楽しみと言うより、文化的な最高レベルを見せて頂いた感じで、心地よいし、素晴らしい!
翁は、やはり、1月の定例版にして、各流派が1回はやるようにした方が良い。これがないと新年始まらないような感じ。12月はクラシックの第九で、1月は翁。そういう定番。来年の1月式能も行くぞ。どの流派のを観ようか。