3月16日 川崎能楽堂
狂言『柿山伏』 シテ(山伏)山本泰太郎 アド(柿主)山本凜太郎
能『楊貴妃』 シテ(楊貴妃)観世恭秀 ワキ(方士)殿田謙吉 アイ(所の者)山本則孝
面の紹介無し。増女かな。
川崎駅から近い処に有る能楽堂。能楽堂と名乗っているが、能舞台が建物の中にあるのではなく、能舞台の屋根もないし、目付柱なども半分以下の長さ。橋掛かりも短い。見所も小さい。1986年完成らしい。設備は古い。年3回3月9月12月の定期能を催しているようだ。魅力は、舞台と見所(とりわけ最前列)が極近いこと。ホントに役者の息づかいも聞こえるほど。鎌倉能楽堂も規模は小さいけど、鎌倉と違ってこちらは固定椅子席。椅子が狭いし、前と近いし、ロッカーはないし。良い感じで観られるけど、ちょっと辛い。でも、また行ってみようと思う。
『柿山伏』。山本東次郎家。山伏が柿の木に登る様を、葛籠の上に乗って示すが、葛籠に乗るだけでも大変なのに、木に見立てるワキ柱が短くて、手の置きようがない。極めて不安定のまま、烏になったり猿になったり。いざとなればちょっとでも捕まれる柱がないのだから、大変だろうなと同情する。シテ山伏が飛び降りて足を痛めて、アド柿主に追われるところ。凜太郎君が、泰太郎さんを負い損なってふらつき、倒れそうになって、見所から悲鳴が上がるが、なんとか立ち直す。
何度も観た曲だけど、考えてみれば柱などがある場所ばかりだったなあ、と。
『楊貴妃』。初めて。中国ものだから、手に持つものは日本の扇ではなく、中国の団扇みたいなもの。最初に作り物の宮殿らしきものが出てきて、そこに楊貴妃が入っている。簪を方士に渡すが、簪だけではなくて、秘め事の睦言を教えて欲しいと。秘密の暴露で、本人証明ですね。そこで簪を買えして、頭に着けて舞を舞うが、簪がうまく付かず、後見がでてきて、何かささやき、着け直す。後見の働きを初めて見た。
白居易の「長恨歌」。
七月七日長生殿 夜半無人私語時 在天願作比翼鳥 在地願為連理枝
文月と読んでいたが、これがそのまま地謡などで流れる。教養あるね。この長恨歌。高校の漢文で習って、好きだった。
舞の後、簪を再び方士に渡して、別れる。静かなお終い。川崎の観客は、この辺は弁えていて、地謡などが舞台を去るまで拍手はしない。良い感じ。常連さんばかりなのかな。