2月21日(木) 東神奈川カナックホール

 

『世界の家族 家族の世界』出版記念と言うことか。横浜の東神奈川でやるのも珍しいので、参加。講演会とサイン会というのも初参加だし、勿論椎名誠の講演を聴くのも初めて。

ちょっと前まで椎名誠フリークで、文庫版は、SF小説以外は、すべて揃える!ことを目標というか、決まりというかにしていて、毎月文庫本の新書が出る時期になると、本屋に入り込んですべて買う、という作業。その時に、買い落としていた文庫も買う、ということ。ご存じの通り椎名誠のエッセーや、旅本、それに伴う珍し食の類いは、たくさん、似たような本が出版されている。書店で、持っていないはずと吟味して買い求め、勤務の行き帰りなどに楽しく、笑いながら読んで、満足して、さて本棚に並べようと思うと、あれまあ2冊目だった、ということが何回かある。

 

そういう本の中で、自分の講演の状況に触れたのもあって、我ながらいい加減だ、ということが書いてあった。準備はしないし、演題は守らないし。文化講演会などで他の小説家などと並んで講演するときも、他の小説家先生は、きちんと準備して、きちんと話すのだが、自分はそうはしないと書いてあった。

さて、今回はどんな講演になるのだろう。エッセイに書いてあることはオーバーでしょう、そうはいってもそれなりに話すのでしょう、もちろん教訓などは話さないだろうけど、と期待というか興味があったが、あれまあ、本当に思いつきで、、話題がとびながら、あれこれ、よしなしことを、しかも読者にはもう知られていることをさも新しいことのように話す。「こうなんですよお」たって、そんなこと知ってるし、自分で書いていたじゃないですか、と突っ込みたくなる。まったく緊張感が出ない。時間まで、何度も時計を気にしながら、きっかり話す。でも、同行者が言うには、「古典落語を聞いているつもりになれば良いじゃないですか」だと。なるほどと納得。そういえば、かつて椎名本で仕入れた知識の、情景の全部を話すことはできないのだから、ああ、今日の講演ではここまでしか話さないのだな、と思って聞けば、楽しいよと。・・・なるほど、なるほど。

 

昨日書いた白洲正子とはまったく違う。対極だけど、それが椎名誠だから、仕方ないけんね。もう行かないけど。司会者が、椎名誠先生です、と紹介していたのは違和感。多分本人が一番違和感。

 

同行者は、かつて椎名誠が新宿のビルの屋上にゲル(モンゴルの草原向きテント)を建てたとき(というか置いたとき)、手伝って、しかも最後に最上部に「蓋」をするとき、丸いゲルに登った人で、完成後一緒にビールを飲んだときに、椎名誠に感心された人だったので、サイン会の時にその話をそれとなくした。椎名誠は、その時に、「ああ、あのときの・・」という感じで対応しておった。もう20年以上前のことか。どこかのエッセーにはゲルを建てたことは書いてあって、すぐに壊れてしまったと言うか風で飛んだことも書いてあったが、このビル屋上のゲル登り人間のことは触れられていない。同行者もそれ以来の邂逅だ。邂逅なんてコトバを使うのは、椎名誠に会わないけど、彼もそれなりに懐かしんだんじゃないか、と思うと同行者と一緒に出かけて良かったかなと。

まあ、これも高等遊民。

椎名誠も歳を取った。あれだけ激しく精力的に動き回っていたのに、若干足下がおぼつかない。不眠症はよくなったのか。今でも、怪しいざこ釣り隊で、台湾南部や済州島に、取材を兼ねて2週間くらいずつ行っているらしい。民宿泊まりらしい。海岸の焚き火キャンプは厳しいか。奴隷も歳を取ったか。観客も爺婆がほとんどだった。