2月10日(日) 横浜能楽堂
狂言組(和泉流・野村万作家)
『孫聟』 シテ(祖父)石田幸雄 アド(舅)深田博治 小アド(太郎冠者)月崎春夫 小アド(聟)飯田豪
『文荷』(ふみにない) シテ(太郎冠者)高野和憲 アド(主)岡聡史 小アド(次郎冠者)野村太一郎
連日の横浜能楽堂。常連客になったか。
今回は、狂言らしい狂言、大笑いの2曲。眠くなるわけが無い。
『孫聟』
シテが、祖父(おおじ)のお面を着けて登場。杖を突いて、腰を90度曲げて、「エイ、エイ」と声を上げながら。話す内容が、本当にしつこい。舅(アド、シテの子供、孫の親ですね)が婿入りの主たるお迎え人のはずなのに、祖父(シテ)があれこれ口を出す。孫聟に対して酒を勧めるのも、何度も同じことを言う。歓待しているし、自分も飲みたいのだ。たしなめられると、その時はわかったような態度だが、すぐさま繰り返す。太郎冠者に口うるさい。年寄りには、あるある。でも憎めない。「エイ、エイ」と声をかけて退場すると、豊かな気分になる。
和泉流にしか無い曲らしい。
『文荷』
稚児好みの主のラブレターを、相手に持って行かされるお話し。LGBT。妻もいるからバイセクシャルか。平安時代から戦国時代もよくあった話しだ。信長と蘭丸。その他いっぱい。が、太郎冠者、次郎冠者は馬鹿にして大笑い。稚児好みは庶民の趣味では無いのだな。持っていきたくない。けど、主の稚児に対するラブレターを覗き見してしまう。この気持ちも良くわかる。興味津々なのだ。で、やる取りしているうちに破いてしまう。帰りが遅い太郎・次郎冠者を迎えに来た主が、自分が書いたレブレターを見られて破かれているのを発見。怒り出すが、次郎冠者も、太郎冠者も、破けた一片を持ち、返事です、と見え透いた、アホみたいな言い訳。お許しくださりませ、やるまいぞやるまいぞ、とおなじみの終結。大笑いです。
どちらも30分ほどの曲で、まあコントなのだけど、現代コントは10分くらいでしょう。平安時代は30分で、飽きさせず、大笑いを誘う。失敗談が多いけど、人を傷つける内容ではない。高等遊民的な、お笑い。素晴らしい伝統芸。
野村太一郎君が、まだ修行が足りないか。眼を密かにキョロキョロしていた。祖父は7世野村万蔵、父は5世野村万之丞。名人の直系。7世野村万蔵すなわち初世野村萬(人間国宝)、その弟が野村万作(人間国宝)、野村四郎(能シテ方、人間国宝)。名門なのだ。プレッシャーあるかな。高等遊民は、こういう家系は無いし、無くて良かった。