1月20日(日) 横浜能楽堂
トーク「自作を語る」 山口晃(画家)
能『箙』 シテ(男・梶原源太景季)梅若紀彰 ワキ(旅僧)森常好 アイ(所の者)松本薫
面:後シテ 「平太」(伝・古元休作)
この日、横浜能楽堂は、山口晃の「昼ぬ修羅」という特別展会場にもなっていた。何だか良くわからない。
トークは、その山口晃のインタビュー。NHKの大河ドラマ「韋駄天」のタイトルバックも描いているらしい。何年か前、赤レンガ倉庫前で薪能をしたとき、透ける鏡板も作成したと。まったく能に無知ではない、現代芸術家とか。今回、能『箙』の舞台上に、梅の木を作成して、展示もして、能の一役となる。
『箙』は、珍しく、平家物語で平家方ではなく、勝利した源氏方。戦でも死なない、平家武将を殺す梶原源太景季のお話。一ノ谷の合戦で、箙に梅を差し込んで旗頭として奮戦勝利する武将。
前半は、謡、語りが多い。アイも説明ばかりで、やや眠くなりそうだが、やはり、笛の一声で始まると緊張して、背筋が伸びる。前場、シテ男が謡う合戦の様子は、手に取るよう。生田の森から一ノ谷まで三里の間に平家10万。数千隻の舟を平家は埋めて、赤旗がたなびく。一方、源氏は、6万余、範頼の正面、義経の搦め手。白旗。目に浮かぶよう。地謡とシテ男の掛け合いで謡われる。ちゃんと予習していって、能ドットコムの詞章訳を見ながらなので良くわかるけど、何もなかったらどうか。
後場は、景季の幽霊が登場して、激しい戦いの様子を激しく舞う。「平太」の面が、武将ではあるが、殺す側の悲しみも浮かび上がる。そういう舞で、図らずも、戦いに勝った武将の悲しみが強く感じられて、落涙。ちょっと恥ずかしい。このところ涙腺が弱くなっている。修羅道に落ちた武将である点では、負け組も勝ち組も同じ。これが日本の戦、武将。
源氏方の面は、「中将」ではなく、「平太」。侍烏帽子も、左に折れる。
舞台上に、特別演出で創られた梅の木。途中で、その一枝を取って、後ろに差し込む。美しさと、力強さと、悲しみと。優美と修羅。絵巻物。
最後は、弔いを委託して退場。静かに退場するんだ。どうしても拍手したい観客が一人いて、他が拍手していないのに、意地になったように拍手する。序破急で、静かに終わりたいのに。
能鑑賞数回に及び、こちらもだいぶ慣れてきた。まだまだ予約は取ってある。