12月22日(土) 横浜能楽堂

雅楽 琵琶 秘曲「啄木」

    管弦 双調「陸王」 笙 篳篥(ひちりき) 龍笛 琵琶

(休憩)

能 経正 金剛流 古式

   シテ(平経正)金剛龍謹 ワキ(僧都行慶)工藤和哉 アイ(能力)茂山茂

   面:シテ「十六」(古元求満永作)  楽家・豊家に伝わる古作の楽琵琶使用

 

本物の琵琶の生演奏、初めて。唐から伝わった三秘曲の一つで、広辞苑によると「絶滅した」と。復活したのだろうか。楽譜らしきものを取り出したが、曲にメロディーはなく、掻き鳴らす、弾くと言った風情。平安貴族の、空に月があって、池があって、花の香りを楽しみながら、爪弾く感じ。平家物語、源氏物語の世界。それにキツツキの秘曲だからだろう、たたいたり、引っ搔いたりする。きっと、CDで聴いても退屈するが、生演奏だと衣装もあって、風情豊か。これが、平安期の寝殿造り建物で演じられると、ほろりとくるのだろうと想像に難くない。

 

管弦は、これは4人の合奏だから間違いなく「楽譜」のようなものが存在するのだろう。神舞が頭の中で浮かぶ。これも、きっと、そうした建物の舞台、厳島神社など、で踊りと共に演奏されると、趣豊かなのだろう。源氏物語。

 

能の経正は、事前にユーチューブで観ていたのとは違い、アイの狂言方が物語るところから始まった。笛の一声からではなかったが、この狂言方、茂山茂がよかった。大きな声で、はっきりと。ワキは、かなりの老人が演じていた。金剛流は初めて。で、シテの舞も見どころたっぷり。供養の管弦講に引き寄せられて出現する経正の幽霊の舞、見とれた。面も良い。大鼓にリードされて調子が変わって、囃子方が盛り上がり、戦いの舞になると、これまた勇壮だが、恥ずかしいと引っ込んでしまって、突然の終了となる。序破急。

金剛流の小書で「古式」なので、本物の琵琶が登場する。雅楽演奏で使ったものだろうが。アイから始まるのも、金剛流なのか。面も美しい。今回は、シテ、ワキが退場するときにも拍手は起こらず、地謡、囃子方の半分以上が退出したときに拍手で、良いタイミングだった。能は、急で終わるから、十分な余韻を楽しみたい。終わったら、涙が出てきてしまった。能の世界は素晴らしい。

シテの面「十六}は、能敦盛によく使われるもので、敦盛の死が十六歳だったからとも。経正は、敦盛の兄者人だから、もう少し年齢は高いけど、まあ、こういう若者の貴族などに使われる。良いお面でした。