12月16日(日) 横浜能楽堂
トーク 中村雅之横浜能楽堂館長
狂言 仏師(大蔵流) シテ(すっぱ)善竹隆平 アド(田舎者)山本則秀
能 土蜘蛛(観世流)
シテ(僧・土蜘蛛の精)坂真太郎 ツレ(源頼光)伊藤嘉章 ツレ(胡蝶)佐久間二郎
ワキ(独武者)舘田善博 ほか アイ(土蜘蛛の眷属)善竹隆司、善竹隆平 ほか
面 後シテ・土蜘蛛の精「顰しかみ」(作者:高津紘一) ツレ・胡蝶「小面」(作者:池谷嘉右衛門)
横浜能楽堂普及公演「眠くならない」という。
ところが、主催者の館長のトークがつまらなく、ここでウトウト。この館長は「これで眠くならない!能の名曲60選」を出版している。この宣伝を兼ねた企画なのか。事前の学習会もあって、参加者には同本のプレゼントがあった。参加しなかった。もう本は持っているから安くしてくれとお願いしたら断られた。参加費2000円、同本の価格1800円。参加費500円くらいならば参加したのに。今日も、同本を販売していて、館長のサインがもらえるという。トークも、その本の宣伝的で、つまらない。いや、その本が嫌いというわけではないのです。前から買っているし、辞書的に、事前学習的に重宝に利用していた。
そのトークのつまらなさに引きづられて、狂言もついウトウト。面白い狂言なのに。ちゃんとした演技なのに。館長のせいだ。
休憩を挟んで、土蜘蛛。
これは眠くならない。しずしずと舞台が創られ、笛の一声でピット気が締まる。トークなんて無くても、土蜘蛛は眠くならない。トークは邪魔だけ。
土蜘蛛は、ここで2回目(※)。前は、人間国宝が演じた企画。梅若実が土蜘蛛。このときは、確か、36個くらい血の筋を投げた。今日は、中入り前が3回、後が10回。回数ではないが、巻き方に良不良があるか。さすが梅若さんは上手かった。
今回の独特は、土隠という小書き。間狂言が土蜘蛛一族の歴史を語り、頼光軍とは戦えないと蜘蛛の子を散らして逃げる。血の筋も下手くそ。若い狂言方の善竹隆司さん作らしく、平成29年文化庁芸術賞を受賞したらしい。なかなかよろしいが、要するに能楽の本筋からは離れた実験的なものか。成功はしていると思う。笑えるし。未経験者には解りやすい。でも、能本体の土蜘蛛の精の演出が少しぼけたか。
能の終わりは、いつも良い。地謡のぱっと止まる声、それでパシッと舞台から下がる。そこで拍手するな、といいたいけど、まあ仕方ないか。
トークといい、小書きといい、能の緊張感を楽しみたい私には、ちょっと。シテがまだ未熟か。
でも、能は好きだなあ。何でこんなに好きになったのだろうか。
(後日注)能土蜘蛛の後シテの面、「べしみ」と記載していましたが、「顰(しかみ)」の誤りで、訂正しておきます。単に、僕の読解力と知識不足・・。
(2019.5.8記載※)1回目は、2017年(平成29年)7月2日(日)横浜能楽堂特別企画「人間国宝が案内する能の名曲」の中でした。狂言が、寝音曲で野村万作、能が、土蜘蛛(勤入)で梅若玄祥でした。この当時は、能はたいした興味はなく、むしろ万作の狂言中心でした。梅若玄祥は、当時名で、平成30年2月に4世梅若実襲名。平成26年人間国宝です。