12月15日(土) 横浜みなとみらいホール

指揮者:井上道義

ベートーヴェン:序曲コラリオン

ベートーヴェン:交響曲第9番合唱 ソリスト(略)、東京音大合唱

 

年末恒例の9番だが、今回の指揮者は井上道義。もう何年も日フィル定期会員だけど、井上はたぶん初めて。解説によると、2012年12月に、ここで第9を振っているらしいが、その時はサボったのかしら。記憶に無い。

何故、井上は日フィル少ないか。実は、例の分裂騒動のときに、組合=争議者側の現日フィルに対して、資金を財界などに頼って分裂していった側=新日フィル(と僕は理解している。)の首謀者の一人が、井上道義。当時は渡邉暁雄対小澤征爾だったのかも知れない。その弟子が、楽団運営の考え方も相続して後継者になっていくのが、コバケンこと小林研一郎対井上道義の図式(単純すぎるか)。

分裂騒動と争議が70年代から80年代の時期的なものもあり、筆者は断然日フィル派であり、新日フィルは、まあ聴かないのだ。題名のない音楽会は新日フィルだったかと思うが、黛敏郎という右翼(と僕は思う)が司会をしていて、番組は面白かったが、黛は好きになれなかった。

今回の井上道義の9番は、そんな感情と思い出、思い入れの中で聴く。もう何年も前のことで、そんなこと知らない楽団員や会員、聴衆も多いのだから、余計なことかな。

井上道義は、完璧主義者だと思う。すべて、自分の指示の範囲内で、自分の思うとおりの演奏会をしたいのだ。コラリオンの際、舞台の照明を、小編成に合わせてスポットライト型にしたのも然り。どうしても一言開始前にしゃべりたくて、いつものオーケストラガイドの時間に始めようとしたが、聴衆が少ないというので、わざわざ9番の前に変更。大したことは話していない。躁病かも知れない。演奏は、オールドスタイル。ゆったり、重厚、きっちり。合唱団も、2楽章後に入場するスタイル。何だか、とても緊張した9番。楽しい、夢に溢れた曲なのに。そこがコバケンならば、第1に楽団員に対する尊敬がある。井上は言うとおりにさせたがる。音楽は楽しいものじゃないのか。井上は、実力も能力もあるから、自信に溢れる。でもね。分裂の遠因というか、音楽に対する考えの違いかな。今年は、コバケン指揮と井上指揮と両方あるが、楽団員は一緒。どんな感じ?筆者は、コバケン・日フィル派。楽団員への尊敬は、聴衆との共感に繋がる。完璧な天才と、楽しい人間味溢れる人物とどちらが良いか。どちらが、音楽の魅力を一般聴衆に届けられるか。音楽を大衆へ。ヴ・ナロード。

もう、井上道義は。小澤にはなれないのだから。

まあ、演奏会は、悪くはなかったです。きっちりしていた。ちょっとカラヤンの姿が見え隠れ。