9月29日(月) 観世能楽堂
鼎談 「現代社会と顕彰能」
観世清和
三村明夫(東京商工会議所名誉会頭)
樺山紘一(渋沢栄一記念財団理事長)
越野充博(東京商工会議所北支部会長)
解説 中村雅之(作者)
(休憩)
能『青淵』
シテ(篤太郎=渋沢栄一)観世三郎太 後ツレ(関根祥丸) 前ツレ(慶喜)山階彌右衛門
ワキ(朝臣=大隈重信)福王和幸 オモアイ(茶屋の亭主)石田幸雄
アドアイ(女甲)野村太一郎 アドアイ(女乙)石田淡朗
笛:松田弘之 小鼓:飯田清一 大鼓:亀井広忠 太鼓:林雄一郎
地頭:梅若紀彰
この『青淵』の企画段階から、マスコミ報道されていたし、紀彰先生が製作から関与するということであったので、新作能は観たことが少ないけど、以前から期待して、銀座まで出かける。
しかし、入場の段階から、どうも観世の方々は少なくて、能の初心者も多いような感じで、雰囲気が異なる。
どうやら、渋沢栄一を顕彰するための新作能ではあるが、むしろ、実業界の中での渋沢栄一を讃えるための企画で、付属的に能を作成したみたいで、能会が主にはなっていない。
前半の鼎談は、75分もの時間をかけて、渋沢栄一の生涯やら思想を振り返るモノで、登壇者も実業界の方ばかり。観世ご宗家はいられるが。
新作能を作るときも、ハナからシテは観世の次期宗家三郎太さんと決めていたようで、北区の商工会と観世宗家のコラボという感じ。
それでも、明治時代までは、芸能というのも今より身近で、会社企業に能楽部があったよう。その流れで、新作能を作ろうという動機は悪くはない。
配布されたパンフには、協賛企業の名刺広告が並ぶ。それだけ、こういう企画には金がかかるのだろう。
ワタクシは、完全に『青淵』の鑑賞者。
『青淵』は、作:中村雅之 節付:梅若紀彰 作調:亀井広忠 というメンバー。
出演者も、シテ以外は、名人ばかり。
ストーリーは、徳川慶喜の家臣として、欧州から帰国した篤太郎(後の渋沢栄一)が、静岡藩の立て直しに成功してことを受けて、東京の新政府から招聘される。
武士として2君に交えずとの気持ちから、慶喜に相談すると、あっさりと東京へ行けと言われ、出仕することに。
北区の飛鳥山の料亭で、歓迎の宴が行われて、大隈重信やら茶屋の女どもが楽しんでいる。
寝込んでしまったシテ篤太郎。夢の中で、後ツレ(悪鬼)に、自分が儲ければ良いだろうと誘惑されるが、孔子の教えに従って、シテ篤太郎は悪鬼を退治する。
夢から覚めて、喜びの舞を舞う。
まあ、あんまり。楽しい能ではない。
後ツレ悪鬼の関根祥丸先生。舞がピシッと決まっていた。さすが。
今回一番の役者となった。
アイがなかなか活躍していて、多分新作の小謡やら小舞やら。石田淡朗君、久しぶりに拝見する。
地謡は、新作の曲だけに、初めは揃わず、地頭の紀彰先生の声も響かない。が、後半に入ると、紀彰先生も乗ってきたのか、素敵。
節付けは紀彰先生の梅若流。しかも、引くことが少なく、ピタッと止める節が多かったような印象。
檜書店から『青淵』の謡本が発売されていたけど、買ってこなかった。
能としては、東京観世会と梅若会。これはなかなかなのではないか。
これが再演されるようなお能になるかどうか。もう一度拝見したくなるか。どうでしょうか。