「ディベート甲子園2014 高校の部 論題解説」を読む(その3) | 柏ディベートラウンジ(KDL)のブログ

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「高校の部 論題:「日本は外国人労働者の受け入れを拡大すべきである。是か非か」

付帯:①日本国内に事業所を置く機関との雇用契約の締結のみを条件とする日本国内での労働を認める在留資格を新設する。②雇用契約の締結先機関及び国籍による受け入れ者の制限、受け入れ人数の制限を行わない。」
(以上、NADEのウェブサイトより引用)
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 今回は、「5 予想される議論(肯定側)」を整理したいと思います。
 メリット3要件の考察は、次回にまわします。
 (前回、分量が多くなってしまったので、もう少し刻んでみることにしました。)


 論題解説では、
 はじめに「労働力不足の改善」がメリットとして挙げられています。

 引用開始。
「まず、労働力不足の改善が考えられます。前述した様に、日本では、少子高齢化が進行しています。そのため、将来深刻な労働力不足となる見込みです。労働力が国内で確保できなくなると、製造業などは海外に流出してしまって、日本国内経済の悪化がより深刻になってしまいかねません。外国人労働者を受け入れることでこれを防ぐという主張が考えられます。」終わり。

 外国人の受け入れ条件を拡大して、しかも付帯文で人数制限がないとなれば、発展途上国に比べて相対的に給料が高い日本に外国人労働者が集まる。
 このことにより、国内における労働者の需要に対し、十分な労働力を提供することができて、製造業などの海外流出、いわゆる産業の空洞化を防ぐ、というロジックのようです。

 ここでは、日本国内の経済情勢の更なる悪化を防ぐことが主旨となっているようです。
 つまり、論題を導入することが日本経済に良いかという視点から論題を見ていることがわかります。



 2つ目として、労働力不足の解消だけでなく、@外国人労働者が納税や社会保障の担い手になる」点を挙げています。これは、論題を導入することが日本の社会保障に良いかという視点からから論題を見ていることがわかります。

 引用開始。
「また、少子高齢化が進んでいく中で、生産年齢人口に対する高齢者が増えていくということになりますから、プランによって増加する外国人労働者は、労働や生産のみならず納税や社会保障を担い、日本を支えていくことが期待されます。」終わり。

 少子高齢化との関係でメリットを考えると、このような考え方も出てきそうです。
 この点については、ある程度具体的な状況を踏まえて考えていかないと、理解しにくいような印象を持ちます。
 (例えば、外国人労働者が、どのような税や社会保障を、どの程度負担するのか、そのことがなぜ大事なのだろうか、などの疑問が浮かんできます。)



 3つ目に、外国人労働者による消費の拡大を述べています。

 所得を得る人口が増えることにより、消費活動が活発になるというロジックのようです。

 引用開始。
「さらに、外国人労働者が日本で生活することに伴って消費が拡大することも考えられますから、人口が減少し市場が縮小しつつある日本経済にとって助けになると考えられます。このように、外国人労働者は、日本の社会や経済を支えていく担い手としても期待されます。」終わり。


 以上、論題解説の記載内容の順番に書いていますが、
 ここで、論題解説において、労働力不足に対する否定側からの反論を想定した説明がなされています。内容は、労働力不足に対して現状行われている取組みです。
 
 この部分の記載は、肯定側立論を考える際、このような否定側からの反論を踏まえて(つまり、否定側から、このような反駁があったとしても対応できるように、)、作成するといいですよ、という論題解説の筆者からのアドバイスのように見えます。

 引用開始。
 「一方で、労働力不足については、今まであまり活用されてこなかった、高齢者や女性の活用によって、解決するとの反論が考えられます。実際に現状でも、労働力不足に対応するために、定年の引き上げや女性が社会復帰しやすい環境を整えるといった対策が取られています。 」



 さて、肯定側議論に戻ります。

 4つ目は、労働力不足の解消のうち、特定の分野(介護・医療分野等)について説明しています。論点を絞った場合の具体例といったところでしょうか。
 内容としては、現状では外国人の受け入れが不十分であるため、労働力不足である旨を説明しており、論題を導入することで、この現状の問題が解決できるのではないかと示唆しています。

引用開始。
 「さらには、特定の分野(たとえば介護・医療分野や「肉体労働」と呼ばれる分野など)では、労働力が不足している傾向にあります。特に、少子高齢化が進む日本にとって介護や医療に関わるニーズは増える一方ですから、致命的な問題となりかねません。それに応じて、現状では、インドネシアやフィリピンから一定数の看護師及び介護福祉士を受け入れています。しかし、現状では労働力不足を補うほどの受け入れは進んでいないため、慢性的な労働力不足に陥っているようです。そこで、さらなる労働力の受け入ることで、もちろん、技術の習得や言語の障害など様々な資格は残りますが、医療分野など人材が不足する分野の人材を安定させることにつながるかもしれません。」終わり。

 個人的には、現状で問題がある、すなわち、問題が解消していない状態であるということは、解消しない理由が存在していることだと思います。
 なので、立論をつくる際は、なぜ現状でその問題が解決しないのか、という点について、ジャッジに口頭で説明できる程度に理解しておく必要があると思います。(これは、自分が理解していないと、人に理解できるように説明することができないと考えているためです。)


 5つ目は、受け入れを拡大することにより、かえって外国労働者を取り巻いている諸問題について解決することができるのではないか、と示しています。

 引用開始。
「また、現在、日本人が好まない職種に対して研修や技能実習名目での外国人労働者が活用されています。本来、継続的な雇用を前提とはしていないため、十分な法的手当がなされておらず、適切な規制もなされていないことも指摘されています。それに対して、継続的な雇用を前提とする在留資格を新設することによって、このような問題に対し、適切な規制ができるようになるかもしれません。 」終わり。

 
 肯定側議論については、労働力不足の解消や、それによる経済的側面へのメリットが、比較的厚く述べられているように感じました。

 個人的には、5つ目の外国人労働者の人権に関心がありますが(一応、法学部出身ですので。。)、ここを立証するためには、色々と考える必要がありそうです。
 
 いずれにせよ、論題解説は一定の分量に相当数の議論を盛り込んでいるため、各自が立論をつくる際は、ロジックを念入りに詰めていく必要があるように感じました。ワクワクしてきますね!