先日、ある会社の方と話をしていたら・・・
「仕事を任せられない上司が多い」
「指示命令スタイルの上司は、まだまだ多いのかもしれない」
「任せる覚悟や任せた後
の辛抱が足りないケースも見られる」
「自分が言われたら、決定権、責任すべてを任せるって捉える」
などと、仕事を任せるということについて、何らか不満や言い
たいことがあるような会話がなされていたのですが、どうやら
根本的な勘違いをしているように思うので、触れておきます。
上司が部下に「仕事を任せる」というのは、全権を委任すると
言っているのでもなければ、勝手にやっていいと言っている
のでもありません。
その仕事に対する責任を負うのは上司や組織の長であって、
「任せる」と言ってもそれは何も変わるものではないのですが、
勘違いして「任せられているのだから」と報告も連絡も相談も
しないような人がいます。
そういう人に対して責任を自覚する上司ほど不安に思うのは
当然で、信頼もできなくなってくるのでだんだんと任せられない
人になっていきます。
だいたい、部下として関与されたくない(細かに情報を求め、
指示命令してくる上司がイヤだと思う)のであれば、組織でやって
いる(シナジーの追求やリスクのコントロールをする)意味がない
ので、組織など離れたほうがよいでしょう。
責任を取りたくても取れないのが部下であって、そんなに取りたい
のであれば、一人になるしかありません。
こういう当たり前のことはさておき、「仕事を任せられない上司が
増えている」というのであれば、その現象について考えてみると、
思い当たるのは二つのことです。
一つは、昔ほど人数当たりの仕事の量が多くないので任せる必要
がない、ということ。
成長の鈍化によって仕事の絶対量が増えない中で、ITによる効率
化も進み、ひょっとしたら専門分化が進んですぐに任せられる業務
が減っているという面もあるのかもしれませんが、部下に任せる
ような仕事がなくなってきているのでないでしょうか。
昔なら、仕事量がどんどん増え、会社が大きくなっていく過程で
面倒な雑務や作業も増大していくので、気持ちは別にして任せざる
を得なかったのが、今はそういう環境ではなくなったということです。
二つ目は、メンバーを育成するという意識が希薄になっているので
はないか、ということ。
仕事を任せるというのは、別に忙しくて手が回らないからというだけ
ではなくて、やってみさせて経験を積ませて育てたいからという理由
も大きいわけです。
プレイングマネジャー化が進んで、メンバーのことより自分のことに
視線が向くようになり、業績も厳しいので、将来のことより今のこと
ばかり考えるようになって、人材育成という課題の重要性が低下して
しまったとすると、仕事
を任せない上司が増えるのも成り行きとして
自然なことだと思います。