人事制度や組織人事に関わる分野のコンサルティングには、
その会社を十分に理解することが不可欠ですが、私は現状
だけでなく、歴史を知ることを大切にしています。
解決策や要望を形にするのであれば、現状をしっかり把握
すれば良いという考え方もあるでしょうが、創業の頃からの
変遷や推移に関する知識は、提案をより良いものにします。
得てして企業内部にいる人達は、歴史を軽視しがちになったり、
または軽視していなくても客観視するのが難しいために、顕在化
しつつある問題に焦点を当ててしまいがちになります。
しかし、そのようなレベルで問題を把握すると、どこの会社でも
同じような問題解決策しか出てきません。
同じ時代に同じような世代が働いているので、どこの会社でも
表面化する問題は似たようなものになるからです。
得てきたものや失ったものがあれば、変わってきたことや変わって
いないことがあって、それらを深く考えなければなりません。
それは、企業のアイデンティティであり独自性であって、そこに
根ざして現状をみることが、問題の把握やその解決策の「らしさ」、
オリジナリティを生み、ひいては効果的な解決策につながります。
もちろん、なりたい姿や目指す場所も、世の中の動向・流行も大切
ですが、3つ目の視点として、歴史を軽視してはならないことです。
であるなら、現状では企業内部の語り部が減ったり、疎まれたり
しがちですが、そのような存在は貴重です。また、組織人事に関
わる人達にとっては、地道に歴史を残す作業や、歴史を議論・検証
する作業も大切な仕事です。
商売では目標や振り返りを大切にする一方で、組織人事に関わる
ことでは他社事例ばかり気にされる会社が多いのは、個人的には
少々不思議なことです。