社員の中からコーチを育成する、上司にコーチングを勉強させて
コーチ役を任ずるなどの形で、コーチングの技術を取り入れよう
とする会社が増えています。
個別にコーチを雇うとなると高額になりますから、出来るなら社内
で育て、出来るようになればという発想は良いと思いますが、
難しい点もあります。
一つには、仮にコーチングが成立し、良い目標と目標達成に向かう
自発的なやる気が醸成されて、計画・手法も明確になったとしても、
会社の仕組みとしてそれを承認し、評価するようになっているかどうか。
上司が良いコーチとなったとしても、その導きを後押しするような
評価システムがなければ、コーチの存在意義は低下していきます。
人事制度と、上司・部下の目標共有・評価は密接に関連しており、
上司のコミュニケーション技術だけ磨いても効果は限定的です。
二つ目は、コーチたる上司にはクライアントたる部下が、自ら到達
すべき地点とマイルストーンに気づくまでの時間が必要であることです。
答えは相手の中にある。
それに気づかせることが大切で、一方的に与えることはしないのが
コーチングの基本的スタンスです。
忙しい、時間がないが口癖のようになっている組織を頻繁に目にします
が、果たしてこういう組織がコーチングなどという手間ひまと忍耐を要する
ことをできるか、というのはほとんどイメージが湧きません。
三つ目は、コーチングの実施に当たっては、上司が部下の能力や意欲を
信頼していることと、部下がコーチたる上司に対して思うことを気兼ねなく
話せるような関係が必要になるわけですが、これは普段の上下関係を全く
抜きにしないと難しいということ。
部下が評価者であり権限を持つ上司に対して忌憚なく話せるのか、日常の
物足りなさを全く排除して上司が部下と向き合えるか。
日常的な感覚を見事に切り替えてコーチングをすることが本当にできるのか、
という問題です。
コーチングという技術、考え方を社内に導入・浸透させていくことは良いと
思いますが、これらをクリアしないと意味がなかった、ということになります。