旧リクルート・コスモスの江副氏が口癖のように言っていたそうです。
「業界を良くする」ということでした。「不動産の価格の根拠やその決定
プロセスが不透明であることが、消費者からの不信を招いている。
また参入障壁が低いので、儲かる時期だけイロイロな人が入ってきて
イロイロなことをしてしまう。
これらが業界の印象を悪くしているし、実際に他業界と比較して好感度
が高いとは言えない。
そして、これらのことが不動産業界の発展の障害になっている。」
という趣旨だそうです。
確かにそうですね。
何かが欲しかったり、何かに困ったりした時に、気軽に安心して頼むこと
ができる業界であることは、その業界にいる多くの会社が恩恵を被る。
だから業界全体の信頼を上げることは全ての会社にとって大切なこと
なのですが、「勝ち組・負け組み」という言葉が定着してしまって以降、
どこの業界も業界内の競争にかまける一方になって、業界を良くし、
外からの期待に応えるという発想に乏しくなったように感じます。
もちろん、いつも前途洋洋たる業界ばかりではないので、競争は必然で
あり勝つことを宿命づけられているのが企業であり経営なのでしょうが、
かと言って、消費者やお客様を放ったらかして勝負勝負とやっていては、
業界全体の印象が悪化し、それが原因で市場が縮み方向に向かうので
あれば優勝劣敗構造を加速させることになってしまいます。
勝ったつもりが、皆で沈んでしまうことになりかねません。
昔は業界のリーディングカンパニーや老舗企業が、その辺りを理解して
行動していたのでしょうし、業界団体というのも業界全体の自浄能力を
高める機能を持っていたのだと思いますが、最近は全くそうは見えません。
商品開発もマーケティングも人材育成もCSRもすべて自社の目前の競争
の範囲に矮小化されてしまっているように見えます。
経営者には、自社の事業を通し、あるいはその他の活動において、良い
業界づくりに精を出すという役割もあるように思うわけです。