北沢にあるMusicBarに「リク」という美しい声を
もったボーカリストがいる。
名前からすると男性だけど、26歳の女性。
彼女の唄はジャズ系から日本の名曲まで幅広い
ジャンルをピアノやベースに合わせて唄う。
先日のステージで彼女はいつも違う雰囲気だった。
2-3曲定番の唄を唄った後、彼女はマイクを持ち
少し小さい声で告白を始めた。
この日はこのBarのステージにたって1周年という
日だった。Ownerも来ていて、ちょっとしたお祝い
という趣旨でもあったステージだったのだ。
彼女は少し時間をおいて、
「今日はステージに立たせていただいて1周年という
機会に皆さんにお話したいことがあります。
私はこの活動をするまで、5年間刑務所にいました。
罪状は「強盗傷害」です。
高校を卒業後、上京しましたが仕事もせずブラブラ
しているときに出会った悪い人たちと犯罪を犯す
日々を送っていた過去があります。
出所してから2年近くが経ちますが、先日昔の仲間
が「殺人」で捕まりました。
ついに・・・。という感情でした。
そして、同時に自分の過去も思い出される瞬間にも
なりました。
友人が逮捕される過程で数回、刑事が私を訪ねて
きました。
正直、そのときはつきまとう警察の影にショックでした。
過去は消せない。と思いました。
でも、昨日捜査で訪ねてきた刑事さんから連絡があり
逮捕の事実と最後に
”あなたは罪を償い、社会に復帰している。しかも、好き
なことを出来ている。
こんなすばらしいことはない。是非、これからもまじめ
に大切な音楽を守るよう努力してほしい”
と言われたんです。
本当にうれしくて泣きました。
この大切な音楽を守る場所を与えてくださったお店と皆様
に改めてこころより感謝します。
今日もこうしてわざわざ来てくださって本当にホントウに
ありがとうございました!」
お店は一瞬シーンとしたあと、暖かい拍手に包まれた。
この告白をする勇気は相当なものだろう。
強盗傷害で被害にあった方は一生彼女を許さないかも
しれないし、癒えない傷を負ったかもしれない。
でも、彼女は罪を償い、出所後まっとうに生きようとしている。
自分を見つめたとき、彼女を見習うべきように思い反省を
しつつもその彼女の歌声に癒された秋の夜でもあった。