【出雲口伝と称されているものについての危惧】

出雲口伝と言われるものが最近、注目されているようですが、これは語部(かたりべ)と呼ばれる一族によって伝承されてきた門外不出の口伝のことを指しています。その口伝を代々引き継いで来たのが東出雲王家であった富家。

富家伝承については、門外不出のはずなのに、なぜか先代の富當雄氏に取材して、故吉田大洋氏が「謎の出雲帝国」を書き出版されました。
吉田氏の「謎の出雲帝国」は、吉田氏の個人的な見解が多く羅列されており、生前の富當雄氏はこれに不満で、ご子息に「真実の出雲史を普及させてくれ」と御遺言を残されたとのことです。

現在は富家は、出雲を離れているようで、その後、富家→花田家→春日家と変遷があったようで、富當雄氏のご子息はご健在だそうで、大元出版という出版社を立ち上げられ、先代の遺言を実行されて、「斎木雲州」のペンネームで富家の伝承を執筆され「出雲と大和のあけぼの」、「出雲と蘇我王国」という書籍として出版されているとのことです。しかし、その著者の斎木雲州というペンネームを名乗る方が本物のご子息なのかは、確かめようはありません。

YouTubeやネットで一般的に出雲口伝と称されているものは、二次情報に考察を加えた吉田大洋氏の著書の三次情報や、ペンネーム斎木雲州氏の著書や、それらの解説本や、それらの解説本を含む色々な人たちの考察が混じったあやふやなままの自説や、出雲口伝と称して自分の考察をエンタメとして発信している人もいて、出雲口伝は、原本や写本も現存していない口伝なので、本当の門外不出のはずの出雲口伝は、正確にはわからないです。

それらのいわゆる出雲口伝と称されている色々な人たちの歴史物語は、内容は多岐にわたり、また色々な人の考察も入り混じっていますし、長くなるのでこの投稿では書きませんが、簡単に言えば、天照族に国を渡した出雲族のいわば、敗者の歴史です。敗者の立場なので、天照族の記紀とは違い天照族を悪く表現しています。
僕はそれは立場の違いなので、表現を否定するつもりはありません。

ただ、門外不出のはずの出雲口伝と称される不確かな物語に、それに加えて、殊更に天照族を貶めて、皇統の正統性や、皇統自体を全否定するような考察も出回っており、そもそも明確な古文書もないので、いわゆる出雲口伝と言われる様々な説の研究を反皇室思想にすり替えようとする人に注意する必要があります。
かつて、皇室にまつろわぬ人々として、徹底抗戦をして結果的に負けた部族の末裔や、天照族に怨念をもつ他の部族の末裔の人たちの中には、現代になっても先祖の怨念として反皇室感情を抱いている人もいるでしょうが、天皇というご存在は、我が国の歴史に切っても切れないご存在であることは、日本史の事実なのですし、昔は他の部族同士と認識されていた者同士も、今は、日本国という大きな家の中に住んでいる同胞なのですし、仲よくしてこれからの日本の国をつくっていきましょう。
僕は天皇陛下を敬愛するとともに、出雲の神様も、他の部族の神様も尊重しています。

※出雲口伝は神代文字で書かれていた文献が存在してそれを国の機関に貸し出したら紛失したという噂話も一部の人たちが流していますが、その噂話を、更に、国の陰謀だとかという陰謀論に改変して流布している人もいます。しかし、その古文書があったのかも客観的に検証した人はいません。