【第201回国会(常会)質問第九号】


旧皇族の現状に関する質問主意書


右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。


  令和二年一月二十日


熊谷 裕人


     参議院議長 山東 昭子 殿


   旧皇族の現状に関する質問主意書


 第五十九代の天皇である宇多天皇は、元慶八年(八八四年)、光孝天皇の叡慮により臣籍降下し、「源定省」と称したが、仁和三年(八八七年)、再び皇族に復帰し、光孝天皇の皇太子となり、その崩御後、即位して宇多天皇となった。

 第六十代の天皇である醍醐天皇は、父である宇多天皇が源定省であった時期にお生まれになった。はじめ「源維城」と名乗っていたが、宇多天皇の即位とともに皇族の身分を得て、「敦仁」親王となられた。その後、皇太子となり、宇多天皇の譲位により、寛平九年(八九七年)に即位した。

 このようにいったん皇族から離れたものの、再び皇族に復帰し、天皇となられた事例も存在する。

 現在、旧皇族の中の伏見宮系の世襲親王家の一つである東久邇家の系統には、歴代天皇と男系でつながる男子が数名おられ、悠仁親王殿下とまた従兄弟になる男子も存在しているものと承知している。また、東久邇宮家には、明治天皇、昭和天皇の内親王が妃として迎えられており、血縁的にも上皇陛下や今上陛下とのつながりは深い。

 前述のようにいったん皇族を離れた方が再び皇族に復帰することは過去に前例があり、これまでの皇室の伝統を踏まえると、必ずしも否定されるべきではないという見解があることは承知しているが、いったん皇族を離れた方が再び皇族に復帰した例があることを国民が把握しているとは言えない。

 もっとも、皇室のあり方については、平成二十九年六月七日の参議院天皇の退位等に関する皇室典範特例法案特別委員会における菅官房長官の発言にあるように「国民のコンセンサスを得るために、十分な分析、検討、慎重な手続、こうしたことが必要である」ことは論を俟たない。

 平成三十一年三月二十日、安倍総理は、参議院財政金融委員会で、安定的な皇位継承を実現する方策について「旧宮家の皇籍復帰等々も含めた様々な議論があることは承知をしております」と発言し、戦後に皇籍離脱した旧宮家の皇籍復帰に関して言及している。他方、「国民のコンセンサスを得ることも必要」とも発言し、他の選択肢も含めて慎重に検討を進める考えを明らかにしている。

 右を踏まえて、以下質問する。


一 いわゆる伏見宮系の旧皇族の方には、歴代天皇と男系でつながる男子が数名いると承知しているが、政府の把握しているところを示されたい。


二 前記一に関連して、安倍総理は「旧宮家の皇籍復帰等々も含めた様々な議論があることは承知をしております」と発言しているが、政府として、皇籍復帰について、このような旧皇族の方々と接触し、その意向を確かめたことはあるのか。


三 安倍総理は、「旧宮家の皇籍復帰等々も含めた様々な議論があることは承知」した上で、このような旧皇族の方々に皇族へ復帰していただく方策を模索し、「国民のコンセンサスを得る」べく努力するのか。それとも、広く国民的議論を踏まえて、令和の時代にふさわしい皇室のあり方を模索するのか。安倍総理の見解如何。


右質問する。


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201回国会(常会)

答弁書


内閣参質二〇一第九号

  令和二年一月三十一日

内閣総理大臣 安倍 晋三



       参議院議長 山東 昭子 殿


参議院議員熊谷裕人君提出旧皇族の現状に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。




   参議院議員熊谷裕人君提出旧皇族の現状に関する質問に対する答弁書


一から三までについて


 お尋ねの「いわゆる伏見宮系の旧皇族の方」及び「令和の時代にふさわしい皇室のあり方」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、政府としては、昭和二十二年に皇族の身分を離れた方々の子孫の現状について承知していない。

 いずれにせよ、安定的な皇位の継承を維持することは、国家の基本に関わる極めて重要な問題であり、男系継承が古来例外なく維持されてきたことの重み等を踏まえながら、慎重かつ丁寧に検討を行う必要がある。

 また、女性皇族の婚姻等による皇族数の減少等については、皇族方の御年齢からしても先延ばしすることはできない重要な課題であると認識している。この課題への対応等については、様々な考え方や意見があり、国民のコンセンサスを得るためには、十分な分析、検討と慎重な手続が必要である。

 引き続き、天皇陛下の御即位に伴う行事等が控えているところであり、政府としては、これらがつつがなく行われるよう全力を尽くし、その上で、「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議」(平成二十九年六月一日衆議院議院運営委員会)及び「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議」(平成二十九年六月七日参議院天皇の退位等に関する皇室典範特例法案特別委員会)の趣旨を尊重し、対応してまいりたい。