思い出し昔ばなし

大阪今日は蒸し暑い

この暑さに、ふと過日のある出来事を思い出す。

 

まだ、未成年の頃

家はそこそこ裕福な家庭だと勘違いしていた頃

 

親父が突如失踪した・・・

 

10年以上姿を見せず、結果的には帰ってくるのだが

 

突然消息不明になった親父、5人家族の父を覗いて

 

母と、兄・俺・弟はその日以降波乱の人生を辿る事に

 

私と弟は母と一軒家に住んでいた

 

持ち家だがローンは残っていた

 

いろんな人が毎日訪ねてくる

 

建築士だった親父

 

下請けの人夫(建設業の作業服を着た人)

 

銀行

 

金融屋

 

身元の定かでない風体の輩

 

想像できるだろうか?

 

丁度、初夏の頃

 

正確な日付はよく思い出せないけれど

 

暑さはこびりついている

 

 

弟はパニック気味に不安がっていた

 

俺は親父の身を案じて闇雲に探しまくる

 

母が易の先生に指南され、家から東の方角に向かっていると

 

それを聞いて東にある山の道をバイクで友達と共に

 

捜索する

 

山の登り路が狭くなり

 

今考えると車が通れる道幅ではなかったが

 

後ろが真っ暗で、バイクの明かりの指す前へ前へ

 

ひたすら登る

 

山の頂に差し掛かり

 

前照灯とエンジンを止める

 

周りは相変わらず真っ暗で静まり返っている

 

 

 

闇夜に慣れ始めると共に緑色の発光体が目に入り始める

 

その頃の視力は左右共に2.0

 

目を凝らさなくても、その発光体が何なのかは理解できた

 

 

 

 

しかも、目前に無数のそれが舞っていた

 

 

なんだか複雑な気持ちになる

 

こんなに美しい光景を見た事が無かった

 

ホタルなんて家の周りで見た記憶もない

 

その数にも圧倒され

 

暫くの間俺も友達も暗がりの恐怖を忘れ

 

親父の行方への想いすら何所かに行ってしまう

 

 

 

 

で、ふと目的を思い出すけれど

 

自分の力が及ばない事も

 

しっかりと思い知る

 

もう明けても暮れても

 

知らない人間の来訪と

 

母の苦悩を支えたいと、頭をフルに働かせる

 

 

「何もできない」

 

何をすべきか。

 

それすら何一つ思い浮かばない

 

今迄社会に対してこんな立場に立たされるなんて

 

他人事の様な事が、自分に降りかかっていて

 

それでも今一つ実感が、実態もつかめず

 

ただイライラするばかり

 

 

少し時間が経ち

 

俺たちは家を出る事になる

 

兄は既に自立して嫁さんがいた

 

母・俺・弟の3人は

 

風呂の無い1DKの文化住宅に住む事になる

 

何が文化だ・・・なんて思う心にゆとりもなく

 

ただ屋根の下で暮らせることにそれなりの安息と

 

もう誰も訪ねて来ない事に安心していた

 

クーラーも無く部屋は蒸し風呂の様

 

 

暮らし始めてすぐ、高熱が出た

 

今までに経験した事のないような高熱で

 

立つ事もままならない

 

まだ保険証の手続きも出来ないから

 

病院にも行けず

 

熱も1週間くらい続く

 

熱が下がる時は体が熱く感じる?

 

部屋の暑さに耐えられず

 

家から持ち出してきた冷蔵庫のドアを3分の1くらい開けて

 

冷気を頂く

 

体力の消耗に加え、弱気な気持ちと惨めさに

 

打ちひしがれて、ただ熱が治まるのを静かに待つ

 

公営住宅への転居が決まる頃

 

俺は住み込みのバイトをしていた。

 

もう誰も頼れない

 

パニック症はそんな俺の自立を妨げる最悪の敵だった

 

 

後々の話

 

債務超過に陥り、銀行に二度不渡りを出し

 

母は親父と結託し、東京に逃がした

 

兄も知っていた事を随分経ってから聞く事になる

 

それは父が亡くなり、母も亡くなる少し前

 

そんな昔話が出来るようになった時

 

母に聞く

 

「何で俺と弟には内緒だったの?」

 

母は「お前たちに話して漏れると困るから」だと(# ゚Д゚)

 

確かに一理ある

 

あの色々暑かった時は記憶の向こう

 

寧ろ蛍があんなに心に入ってきた事は

 

親父とおかんのおかげか?

 

鑑賞料にしては高すぎるっての(-_-メ)