世界で一番遠い場所から、、 | 次郎長ブルース2

次郎長ブルース2

ロッカー・次郎長 の、気まぐれなブルース



友人が音楽監督と生演奏での参加をしているとある劇団の公演を、誘われて観てきた。 
いわゆる小劇団てやつで ちょうど、昔俺がやっていた劇団(今はもうない)と同じような規模、スタンスの劇団だった。 

 内容はまあさておき(※楽しめたが)、
とにかく 俺は なんとも懐かしかった。 

外部階段を上がって小屋へ入った瞬間の、受付のかんじ、匂い、そこからもう懐かしかった。 
そして芝居をやる客席へ入るとステージ上にセットが組まれているのだが
それを見ただけで、もう、劇団員たちの小屋入りの様子や建込みの様子、場当たりの様子などが目に浮かぶようだった。

そう、俺も昔 毎度毎度そんなことを繰り返してきた。
人生を変えるんだと思いながら。。 
 あの匂いは、、
昔のそこに青春をかけてきた人間たちからするとたまらなく愛おしい匂いなのだ。
あの独特の。。。
(青春というにはそこそこな歳くってたけど) 

前説を劇団員がやっているのだが それもまた懐かしい。
昔の、自分の劇団員たちの顔が重なる。 
もっとも、、俺はその自分の劇団員たちとは全員じゃないにしろほぼほぼみんな、不幸にも反発しあって分かりあえずして別れてしまったが。。。 

 でもそんな事すら切ない1ページとして あの芝居にかけた日々が懐かしくよみがえる。どうしようもないほどに。 
ちなみにレイイチとは そんな日々の中で出会った。
まるで芝居を離れたあとの俺を予見するかのように。。。 

 〜芝居がはじまると客演の若い人達にまじって、その劇団の本劇団員も出演するのだが 彼らは、、そうなあ、見たかんじ多分俺なんかとはほぼ同世代のオッサンたちだ。 
その時点でこれが解散の最終公演とはまだ知らずに見ていた俺は、
ふと 思う、 
〜多分 このオッサンたちもかつては俺と同じように 人生を変えてやると思って、上京して、ギラギラした目でやってきたのだろうが
いまや年月は流れ その人生の形勢は限りなく不利に傾いてゆき 
それでも「まだ、まだ、、もう少し、、」と思いながら今に至ったのだろうが 
この人達、今生活はどうしているのだろう? そしてなにより 何を目指してなんの為にまだステージに上がっているのだろう?  と、いや、どうしても思ってしまう自分がいるのだ。 

 なんの 為に、、、 

 無理矢理こじつけるとするならば 「芝居が好きでやめられなくて、売れようが売れまいがどうであろうが芝居は続けている」という人達なのか。 
 でも 終演後 生演奏をしていた友人にきくところ、今回が解散の最終公演だったのだとか。 

 なる ほど。。。 

 多分 この人達の戦いは今回で終わったのだ。
少なくとも「戦い」としての役者活動は。

そ、ひとつまた、時代が終わったんだ。 

 俺は 役者としての戦いはとっくの昔に終わったが その後音楽のライブステージという新たなものに移行できた。
レイイチとの出会いによって。 
ただ俺の場合、「終わらせた」という意識はなくて その後芝居は機会がなくてやらなくなったが ライブをやるようになって、相変わらず戦いを(自分の中で)繰り広げてた。 
俺にとっては 少なくとも当面は、ライブのステージを繰り広げることは 直接芝居をやっていなくても役者の修行の一環でもあるんだという意識だったから。

 でも 今はまた、それすらも違うステージにいる。
親父がいなくなり 兄貴がいなくなり レイイチもいなくなり、、
そんな日々が続いたはてに しかし昔よりも、より自分を正面から見るようになった。

 〜遠くを見て遠くを見て、はるか未来のことばかりを見ようとしていた自分、
しかし
世界で1番遠い場所というのは 地球を一周まわってみれば ふり向いた自分の背中、足跡、
いやでもそれに気付く時がくるから。 
 だから俺は 今でも、お客さんが少なくても関係なくモチベーションを維持してステージに立てる。 

 〜その劇団のステージの上には かつての自分の姿が 重なって見えていた。

その同世代の劇団員のオッサンたちに やはり思いをはせてしまう自分がいた。 

なるほどな
最終公演だったのか。。   

懐かしさと切なさと
なんともいえない味を味わってきた。
かつて演劇の聖地といわれた場所で。。。 

その劇団は 友人が参加していたのもあり名前くらいは知っていたが、その程度の認知ではある。

でも

でも、、

その、たまたま偶然足を運んだその最終公演のチケットは 捨てずに保管しておこうと思った。 
かつて いつの間にか出演をフェイドアウトさせていって離れた、別れの思い出すら残さなかった自分の劇団の最後の思い出がなにもないかわりに、 
その、かわりに

その見ず知らずの劇団の解散公演のチケットを貰っておくか と。 

 ひとつの時代に別れを告げる記念品として
捨てずにもらっておこうと思った。 
懐かしい匂い、たまらなく懐かしい、あの匂い。劇場の匂い、まるで昨日のこと、いや、リアルタイムの今日この瞬間のようにすらよみがえる若い日の匂い、

その切ない匂いの苦い記憶をしまいこむには  
〜むしろ見ず知らずのその劇団の最後のチケットが必要だと
思った。。。 


遠く遠くの 1番遠くの場所にある、 そしてしかし、じつは一番近い場所である、
ふりかえった自分の背中、足元をみつめながら、 

また これからも歌を歌いつづけていくだろう俺。。


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