乳がんで治療してきた

患者さん


抗がん剤の治療は

副作用で

日常生活ができないから、と

みずから

終了した



だんだん体力がなくなり

食事もとれなくなり

緩和ケア病棟での療養を希望され


入院した



「ほっとした」

「これで安心して旅立てる」


「家族に迷惑をかけたくない」


「ただ、それだけ」


「家族に迷惑をかけるのは当たり前って

いう人もいるけれど」

「わたしはそうはおもわない」


「そういう家族もいるでしょうけど、

わたしはそれが負担に感じるし

負担はかけたくない」


「家族であっても

甘えすぎたらだめ」


「適度な距離がないとね

だめよ」


「ひとは一人で過ごす時間も

必要よ」


「困ったとき

助け合うことは大事よ」



「迷惑かけたくないけれど

最期はどうしても

迷惑かけないといけない」


最小限でいい


「その分病院に迷惑かけちゃうね」

「ありがとう」



安心して過ごせる



これはほんとに

大事なこと



ただ

なかなか

彼女のように

命をみつめて

先を決めておける方は


少ない


立派だなぁ、と

感じる





ある夜



「しゅって消えられたら

いいのにね」


「朝起きたら抜け殻に」


「なんてね」


「色々あってね」

「だれにもはなせていないことがある」


「だから、同じ思いをさせたくない」


「それだけなの」


「ありがとう」

「いたみもないし身体もらく」

「いつ死んでも悔いがない」

「緩和ケアに出会ったから

わたしはいきてこれた」

「ありがとうね」



はじめてみる涙



それからしばらく

おだやかに過ごされ

ほんとにしずかに

旅立った



いまは

空の上から

みてくれているだろう



わたしも

いつかいくから



そうしたら

もう一度

話しましょう



辛くなかったわけでもないだろう

だけど

憂うでもなく

人生を全うした



見習って生きていきます





また、もこもこの上にいるよ


肌寒くなったらこれにかぎるね


ジロウより