「なにかしてあげないと」

「あせるんてす」


「なんとしても」


「いきてほしいんです」




泣き崩れてしまった娘さん



それまで目を閉じて

なにもいわなかった患者さんが



目を閉じたまま



「ありがとう」


「わかってるよ」


「でも仕方がないんだ」


「これがさだめ、運命なんだ」



どうか

娘を頼みます



そういってあたまをさげられる


私も

頭をさげた



親子というのは

ほんとに難しい


当たり前のようで

当たり前でない



そんな当たり前が

ある日崩れてしまう


病気や事故、認知症で。



親は元気で当たり前



すべてのひとに伝えたい


みんなよくやってるよね

生きていくって

当たり前のようで

当たり前でない


奇跡とまではいわないけど

毎日をあたりまえに過ごしていくって


すごいこと



「自分ががんになったとき

真っ先に思ったのは娘のこと」

と患者さんははなし


「父が病気になったとき、

自分が病気と言われるより

つらかったや

と娘さんははなす



もう十分通じている



さすが親子だ。




お別れはさびしい


それはいいあらわすことは

できない



でも

みんないつかは



そして

生きた証は

大切なひとのむねに刻まれる




それは確かなこと




「それパン🥐じゃないから」 ジロウ


「いいの!あっちいって!」こまち


「はいはーい。こわいこわい」 ジロウ


なんとも言えないこの距離こそ

柴ディスタンス