「こんなとこにいたら、

歩けなくなる」

「入院したせいだ」


乳がんの脳転移と診断


ふらつき、食事がとれない

ということで入院した


放射線治療を始めた

点滴も開始


それでも

麻痺が生じた





夫は信じられないという表情で

まいにち

腕組みをしている


何かに怒っている


ように感じる…





体調が悪いこと


治らないこと



苛立ち






ある日

患者さんは転んでしまった


幸い外傷はない


それをきいて

夫は何かの糸がほどけた



「いい加減にしてくださいよ」


「こんなとこにいたら、

歩けなくなる」

「入院したせいだ」



「元気にしてくださいよ」


「なんでこんなことに」


「なんでうちだけ」


「ぼくらがなにをしたっていうのですか」




ゆかをたたきながら

泣き崩れてしまった




誰のせいでもない



でも


なにか自分をせめているのか



チクショー、と繰り返す



私達って

何ができるんだろう



ただそばにいた


いつもみたいに

そばにいた





何分すぎたか



夫にむかって

患者さんが声をかけた



「ごめんね」








ごめん、じゃない


ごめんねじゃない




なんだろう



悔しくて


やるせなくて








ただただ




そばにいるしかできなかった




なんだか


生きるってさ


なんだろ



なんで

どうして


悔しいね